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個人事業税の駐車場業か不動産貸付業かが争われた事例とそのポイント

2023-03-012023-06-30

東京都と個人事業主が争った裁判とは

令和3年3月10日、東京都とある個人事業主との間で、事業税の課税対象になるかどうかについて争われた事例があり、東京都が敗訴しました。個人事業税は70ある法定業種を営んでいる事業主を対象に課税することになっており、これに該当しなければ個人事業税はかからないことになるのですが、この裁判で問われたのは、「土地の貸主が、駐車場用地として一括して貸し付けている場合で、自らは建築物駐車場や機械式駐車設備を設置しておらず、かつ貸し付けた相手方自身は駐車せずに第三者に駐車させているようなケース」(東京都主税局チラシ(PDF))でした。

駐車場業と不動産貸付業のどちらになるのか

詳細は以下の通りです。

・土地の貸主が一括して、コインパーキングの運営会社に更地を貸した。

・その土地の設備等をコインパーキングの運営会社が建設した。

・運営会社が他人に駐車場として貸した。

これについて東京都は、駐車可能台数など一定の要件を満たす場合、原則として「駐車場業」という法定業種になるとみなしていました。

しかし、駐車場業を営んでいるのはコインパーキングの運営会社で個人事業主ではありません。つまり、コインパーキング会社が駐車場業を運営し、コインパーキングに更地を貸している故人事業主は、土地を貸したということで不動産貸付業にあたる、と解釈することも可能です。

不動産貸付業も法定業種の一つですが、例外的に法定業種にならないケースがあります。それは、土地の賃貸借の契約件数など一定の基準に基づいて判断した場合に、規模が大きい「事業」と判断されず、規模が小さい「業務」と判断されるような場合です。

本件は、一定の基準に当てはめた場合に「業務」となるような規模でした。つまり不動産貸付業であれば個人事業税の対象にならないものの、駐車場業に該当するとした場合には、要件を満たし個人事業税の対象になるものでした。このため、東京都は駐車場業として課税をしましたが、納税者は「業務」となる不動産貸付業のため、個人事業税の対象にはならないとして反論したのです。

ミスが多い論点

裁判の結果、不動産貸付業になるとされ、東京都の課税は誤りであるとされ、東京都は解釈を見直し、今後はこのようなケースについては、不動産貸付業に当たるとして処理を行うとしています。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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