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非上場株式を同族株主が相続する際に用いる純資産価額方式

2023-02-082023-06-30

非上場株式を同族株主等が相続や贈与によって取得した場合の評価方式の一つが純資産価額方式

相続税の実務では、非上場株式などの取引相場のない株式の評価は簡単ではありません。なぜなら取引相場のない株式は時価が分からないからです。そのため、国税が独自のルールを設けて評価を決めています。しかし、その評価方法は会社の規模や株主の属性によって異なり非常に複雑ですが、その中に小規模な会社の同族株主の評価に用いる純資産価額方式というのがあります。

純資産価額方式とは、会社の純資産価額に着目して評価します。株価評価の理論上、会社の純資産価額は発行済株式の時価総額に等しいという考え方がありますので、その考え方を基にしています。

決算書ベースの純資産価額方式

純資産価額方式の計算には、会社の決算書が必要となります。ただし、この決算書の金額をそのまま使う訳ではなく、相続税が課税されるタイミングで使います。つまり相続発生時に評価しなおして相続税評価額ベースの純資産価額を算定することになります。

なぜこのような算定をするかというと、個人事業主の相続税と、計算根拠を同一にするためです。個人事業主が亡くなった場合、その亡くなった時点で事業用資産を評価して相続税を計算するのですが、法人は株式を持って間接的に事業を行っているにすぎないため、個人事業主と同様の根拠で算定しないと、個人事業主と法人とで税負担に差が生じてしまうことになるからです。

ミスが多い論点

会社の決算書をもって、相続時評価額で純資産を算定するのが純資産価額方式ですが、即時償却の対象資産の取扱いでミスが起こりがちです。即時償却とは簡単に言うと、資産を取得したタイミングでその全額を経費とする方法で、全額経費にしますので、会社は資産を有していても、その資産は財産と債務を表現する決算書(貸借対照表)には掲載されません。

とはいえ、会社としては資産を持っていることは事実です。つまりその資産を売却しようと思えば可能です。その即時償却の対象になった資産については、貸借対照表には計上されていないにもかかわらず、純資産価額方式の計算上、資産を会社が持っているとして純資産価額を計算する必要があるとされています。

決算書の数字を前提にすると計算を間違えてしまうため注意しましょう。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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