令和4年度税制改正で財産債務調書の提出義務はどう変わったか
2022-10-182023-06-30
財産債務調書の提出義務とは
所得税の確定申告では、下記二つの要件のどちらも満たす方は、その確定申告書と納税者の財産と債務の明細を記入した財産債務調書を同時に提出する義務があります。申告期限は翌年3月15日までとされています。
1 その年分の退職所得を除いた所得金額の合計額が2000万円を超であること
2 その年の12月31日において、合計3億円以上の価額の財産又は合計1億円以上の出国税の対象となる財産を有していること
これは、国税が富裕層の財産や債務について把握するために設けられた制度で、これによって将来の相続税や出国税の課税のために活用されます。ことになります。
財産債務調書のメリット
財産債務調書を期限内に提出した場合、そこに記載されている財産・債務に関しては、これらに関連して課される所得税・相続税の加算税が原則として軽減されるというメリットがあります。
財産債務調書のデメリット
財産債務調書を期限内に提出しなかった場合や、期限内に提出したとしても財産・債務の記載をしていなければ、これらに関連して課される所得税の加算税が加重されることになります。
なお、この財産債務調書に似ている国外財産調書というのもありますが、これは国外財産等の明細を記載します。そしてこの国外財産調書についても、上記のような措置が設けられています。
令和4年度税制改正の変更点
令和4年度税制改正では、この財産債務調書の提出義務が拡大されました。具体的には、12月31日時点で合計10億円以上の価額の財産を持っている方も提出が義務付けられることになりました。富裕層の中には、多額の財産を所有しつつ、所得税節税のために、所得を2000万円以下にしている方もいらっしゃるようです。となれば、財産債務調書の提出義務がなくなり、国税は状況を把握することができなくなります。そういった状況を鑑みて、超富裕層とも言うべき10億円以上の財産を持っている方は、所得金額に関係なく財産債務調書の提出義務があるとされたのです。
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提出日も延長
こうなると所得税の確定申告をしないのに、財産債務調書の提出義務はあるという方も生じることになります。この点を踏まえ、財産債務調書の提出期限が翌年3月15日から6月30日に延長されるという改正も同時に行われています。
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