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遺言・遺言書

2022-12-082022-12-08

一言でいうと?

遺言(ゆいごん)・遺言書(ゆいごんしょ)とは、一般的には遺言者の財産について、誰に、どのように承継させるかに関することを生前に書き置いた文章と捉えられており、民法上の法制度においては、法に定める方式に従った被相続人の最終意思の表示であり、死後の相続財産の法律関係を定めるためのものと捉えられています。

遺言・遺言書とは

自分の死後、その財産の配分について効力を発生させる目的で、生前に書き残しておく意思表示のことを遺言といい、遺言書は記された書面のことをいいます。

遺言は、満15歳に達した人であれば、原則として誰でも作成することが可能ですが、作成時に認知症などの場合、遺言能力が問題となることもあります。

遺言はいつでも書き換えることができ、複数の有効な遺言がある場合、作成日付の最も新しいものが優先され、またいつでも撤回することができます。

遺言・遺言書の有効期限

遺言に有効期限はなく、仮に20年前に書かれた遺言書であっても、有効です。

遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合でも、受遺者と相続人の中のひとりでも「遺言通りにする」という意思があれば、遺言書に効力があります。

遺言・遺言書でできること

法律に「遺言によって指定された相続方法は法定相続に優先する」と規定されており、遺言では「相続方法」を指定できます。

従って、相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺贈、寄付、5年以内の遺産分割の禁止、相続以外の財産処分. 身分関係に関する事項、認知、相続人の廃除、保険金受取人の変更、遺言執行者及び遺言執行者を指定する人の指定などが行えます。

遺言で定められる事項は法律で決まっており、それ以外の事、例えば「兄弟仲良くするように」などと遺言書に記載しても、法律上の効力はありません。

具体的な遺言・遺言書の例

遺言・遺言書の具体例には次のようなものがあります。

・特定の相続人に多くの遺産を取得させる

・内縁の妻や孫やお世話になった人など相続人でない人に遺産を遺贈する

・遺産を寄付する

・子どもを認知するなどの身分行為

・遺産を渡したくない相続人の廃除(相続権消失)

・遺産分割方法の指定、5年以内の分割の禁止

・未成年の子どもの後見人の指定

・遺言執行者の指定

遺言・遺言書の種類

遺言には「普通方式」と「特別方式」があり、「普通方式」には、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」があります。

また「特別方式」は、遺言者が死に瀕しているなど緊急状態にある場合や交通が遮断された地域にいる場合など例外的な方式で、「死亡危急者遺言」「船舶遭難者遺言伝染病隔離者の遺言」「伝染病隔離者の遺言」「在船者の遺言」などがあります。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自筆で書く形式の遺言書で、封印は特に必須ではありませんが、全文、日付、氏名をすべて自書し、印を押す必要があり、複数ページは閉じて契印をされる場合が多いです。

遺言者の筆跡を残す必要があり、パソコンを利用したり、代筆を利用したりして作成することはできませんが、財産目録を添付する場合には、その目録についてはパソコンで作成することができます。

自書によらない財産目録を添付する場合には、目録の各ページ、両面にある場合にはその両面に署名・押印をする必要があります。

自筆証書遺言の特徴とリスク

自筆証書遺言の場合には、遺言書の法律上厳格な要件を満たしていないことを理由として無効になることが少なくありません。

夫婦で共同して遺言書を作成した場合にも遺言書全体が無効となる可能性があります。

自筆証書遺言の場合、自宅に保管する方法と法務局に預ける方法がありますが、自宅に保管する場合、破棄や紛失、隠匿や書き換えなどのトラブルが発生しやすいデメリットがあります。

自筆証書遺言の修正・訂正

記載内容の一部を削除したり、修正したりする場合には、民法既定の以下のような厳格な方式に従って行う必要があります

・訂正場所の明確な指示

・変更した旨を付記

・付記部分に署名

・変更場所に押印

訂正の方法に誤りがあった場合には、変更のみが無効となり、遺言は変更のない遺言として効力を有するのが原則ですが、場合によっては、遺言全体、該当条項全体が無効になることもあります。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公証役場の公証人が作成する形式の遺言書です。

作成の方法は、公証役場に行き、証人2人以上の立会のもと、遺言者が遺言の趣旨を口頭で公証人に直接伝え、 公証人が聞きとった内容を筆記し、遺言者及び証人に閲覧ないし読み聞かせします。

遺言者及び証人は、公証人の筆記が正確なことを確認して、それぞれ署名・押印をし、 最後に公証人が、方式に従って作成したことを付記して、署名・押印します。

公正証書遺言の特徴とリスク

公正証書遺言は、証人2人の立ち会いが必要で、遺言書の作成に費用がかかるなどハードルが高い方法だといえますが、公証人という専門家が作成する遺言であることから、形式や内容の不備によって遺言書が無効になるというリスクは大幅に軽減することができます。

また公正証書遺言は公証役場で保管されるので、破棄や隠匿、書き換えなどのおそれがほとんどありません。

公正証書遺言の証人選び

公正証書遺言の証人には、特別な資格は不要ですが、以下の人は証人になれない欠格者となります。

未成年者、来相続人になる予定の推定相続人、遺言により遺産を引き継ぐ受遺者、推定相続人、受遺者の配偶者や直系血族、推定相続人や受遺者の配偶者、親や祖父母などの直系尊属、子どもや孫などの直系卑属、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人

親戚に依頼できるケースもありますが、身近にいない場合は、公証役場で紹介してもらうか、遺言書作成から専門家に見てもらう場合は弁護士や司法書士に依頼することになります。

公正証書遺言の証人の仕事

公正証書遺言の証人2人は以下のことについて確認します。

遺言者と同一か別人ではないか

遺言者の精神状態を確認する 認知症などにかかっていないか、精神状態は正常か

正常な判断力を持って自身の意思で遺言しているか

自身の意思で口述しているか

公証人の筆記の正確性、遺言者が口述した内容と相違ないか

公証人及び証人は遺言の「内容の正しさ」まで確認をするわけではないので、遺言としての要件が欠けていないかなどの確認は、遺言者の責務となります。

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言は、パソコン使用も認められていますが、遺言者が記載し、秘密性が高い方法で証書封入をし、証書と同印で遺言者自身が封印をします。

その後、公証役場で遺言の存在を確認することが必要で、公証人1名と2名以上の証人が必要です。

公証人が証書の提出日と遺言者の申術内容を封書に記載し、遺言者、公証人、証人がともに署名・押印すれば完成です。

不備に気づきにくく無効になるリスクや紛失リスク高いため、ほとんど選択されません。

相続の際、家庭裁判所で検認を行わなければならない点もデメリットです。

遺言書の効力とそれが失われる時

遺言は、被相続人の想いを率直に引き継ぐことに役立ち、親族間の紛争を予防する効果もあります。

ただし、遺言というのは、被相続人の遺志を尊重するためのものであり、絶対に従わなければならないものではなく、相続人が納得できない場合、遺言書はその効力を失う場合があります。

遺言は、相続人全員が同意して否認すれば、遺言の効力を失いますが、相続人のうち1人でも「その遺言通りに」という人がいれば、遺言優先となります。

遺言書の内容に納得ができない相続人は、「遺留分侵害額請求権」を行使することもできます。

遺言・遺言書に対する「遺留分侵害額請求権」とは

遺留分として請求できる割合は、配偶者と子については、法定相続分の2分の1、直系尊属については法定相続分の3分の1の額と定められています。

そして、遺留分が認められている相続人には、その遺留分については自分に渡すようにと求める権利があります。

「遺留分侵害額請求権」は、相続開始の事実と自分の遺留分が侵害されていることを知った日から1年、または、それらを知らなくても相続開始の日から10年を過ぎるまでに行使しなければ、時効で消滅してしまいます。

遺言執行者

遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実行するために、必要な手続きをする権限を持った人物を指します。

遺言執行者が行う具体的な手続きとしては、財産目録の作成や、預貯金の解約手続き、不動産名義の変更などがあります。

遺言執行者が指定されている場合には、相続人であっても相続財産の処分を勝手に行うことは出来ません。

ただし、遺言内容によって遺言執行者が常に必要というわけではないので、遺言執行者の指定を行うべきなのかという点は専門家のアドバイスを受けましょう。

遺言・遺言書のよもやま話・豆知識

遺書を開封してしまったら

遺言書は開封しても、効力は失われませんし、公正役場に保管されている、公正証書遺言の原本は封を開けても問題はありません。

しかし、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、密封されていれば、基本的に勝手に封を開けてはならず、勝手に開けると、5万円以下の罰金が科せられます。

実際には、罰金の実例の確認はありませんが、実例がなくとも、開封により他の相続人に、偽造の不信感や改変や隠匿の疑いを持たれたりして相続できなくなる可能性があります。

開けてしまった場合は、家庭裁判所に行き、遺言書の検認を行いましょう。

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