定期同額給与
2023-01-312023-01-31
一言でいうと?
定期同額給与(ていきどうがくきゅうよ)とは、一定の条件の元、損金算入を行うことができる役員報酬の一種で、定期同額給与は、その支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとである給与であり、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものをいいます。
定期同額給与とは
定期同額給与とは、役員の給与形態の一種で、あらかじめ定められた支給基準に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して同額を支給される給与をいいます。
つまり、非常勤役員に対し、年俸又は事業年度の期間俸を年1回又は年2回所定の時期に支給するようなものは、たとえその支給額が各月ごとの一定の金額を基礎として算定されていても、定期同額給与には該当しないことになります。
定期同額給与のメリット
定期同額給与のメリットは、一定の条件の元、損金算入を行うことができることです。
損金算入とは、経費と同じように会社の利益から控除できるお金のことで、税は利益に対して課税されるため、損金によって会社の利益を減らすことで、法人税負担を抑えることができるメリットがあります。
損金算入は、法人税だけではなく、役員の個人所得において、個人負担の所得税・住民税にも関わります。
役員報酬を損金算入できないと、法人税と個人負担税が二重で課されます。
定期同額給与の損金算入の要件
定期同額給与を損金算入するための要件は主に以下の3つとなります。
・報酬額を期限内に決めること
・毎月の支払額が一定であること
・相場と比較して不当な金額でないこと
定期同額給与の「報酬額を期限内に決めること」とは
定期同額給与の損金算入が認められるには、毎月の役員報酬の金額はいつでも変更できるわけではなく、変更期限は、会社設立日または事業開始日から3ヶ月以内と定められています。
また、期限を過ぎてから変更したい場合も、決算後3ヶ月以内という制約があり、基本的には1年に1回見直しができますが、期間中に変更手続きを行わなかった場合は、前年度と同額を支給することになります。
定期同額給与の「毎月の支払額が一定であること」とは
定期同額給与となる役員報酬の額は、株主総会などで決定されますが、従業員の給与と異なり、仕事の量にかかわらず、毎月の給与は金額が一定であることが条件になります。
株主総会で額を決定した後は、基本的に次の決算までの1年間は変更することができません。
定期同額給与が「相場と比較して不当な金額でないこと」とは
役員給与を決定する場合、不相当に高額であったり、決算間際に多額の利益がでている場合の役員給与の増額だったりすると、「利益調整を行った」と見られてしまう場合があります。
また同業や同規模の会社との比較をした時に、収益規模があまり変わらないにも関わらず、役員報酬の額に何倍もの違いがあると、課税の公平の観点から問題になる場合があります。
出勤回数や業務実績などと照らし合わせて、実態に対して妥当な額の支払いになっているかどうかは整合性が取れるようにしておきましょう。
定期同額給与の3つの改定方法
定期同額給与額は、会社設立日から3カ月以内に株主総会で決定しますが、それでは一度決めた支給額が、会社を解散するまで改定ができなくなってしまいます。
前述の事業年度開始の日から3カ月以内に認められる変更を含め、法人税法では以下の3つの場合に役員給与の改定が認められています。
・通常改定
事業年度開始の日から3カ月以内の改定
・臨時改定
役員の職務上の地位や職務内容の重大な変更など、臨時改定事由による改定
・業績悪化による改定
経営の状況が著しく悪化した時など業績悪化改定事由による改定
定期同額給与の改定の注意点
定期同額給与の臨時改定については、偶発的な事情等によるものであって、かつ利益操作等の恣意性のないものに限られます。
定期同額給与の臨時改定は、増額だけでなく減額する場合も認められますが、業績悪化による改定は、「業績悪化」が理由ですから、減額改定のみが対象であり、増額改定は認められません。
また業績悪化による改定は、取引先の倒産や災害や原材料の高騰役員給与を含め、減額せざるを得ない客観的な事情によるもので、単に業績目標値に達しなかったなどや、一時的な資金繰りが目的である場合も該当しません。
定期同額給与以外に損金算入が可能な2つの場合
定期同額給与以外にも、以下の2つに該当するものは損金に算入することができます。
(事前確定届出給与)
給与の支給額や支給時期を自由に決めることができますが、事前に納税地の所轄税務署長に届け出が必要な制度です。例えば、夏季、冬季の賞与等が該当します。
(業績連動給与)
平成29年度までは利益連動給与と呼ばれていた制度で、同族会社でない法人が、会社の業績に役員の給与額を連動させる制度のことで、対象は業務執行役員です。算定の基礎となる業績は、有価証券報告書の提出など客観的な指標によっての評価が必須です。
定期同額給与と事前確定届出給与・業績連動給与の違い
定期同額給与と違って事前確定届出給与は金額や時期を自由に設定できますが、事前の届け出を株主総会などの決議日から1ヶ月以内、もしくは事業開始日から4ヶ月以内にしなければならないなどの決まりがあり、事務作業が煩雑となります。
また事前確定届出給与は定期同額給与と組み合わせて利用することもでき、例えば、役員賞与を設定する場合などに活用されます。
業績連動給与は、事前確定届出給与や定期同額給与とは異なり、金額が確定していないことが特徴といえ、経営層へのインセンティブ付与の手段として、成果主義の企業によく見られます。
定期同額給与のよもやま話・豆知識
定期同額給与のよくある疑問集
Q1 3月決算の会社が8月1日に設立したが、改装で翌年1月まで業務ができず、その期間は無給だが、1月以降の役員給与を損金算入するには?
A1 事前に事業年度の変更を行い、1月からを新事業年度としたり、1月以降の役員給与を事前確定届出給与としたりする方法が考えられます。
Q2 役員給与の増額(減額)について、損金不算入となった場合どうなるのか。
A2 例えば給与50万円で増額20万円が認められなった場合でも、50万円は定期同額給与として、そのまま損金算入として認められます。