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退職所得

2023-01-272023-01-27

一言でいうと?

退職所得(たいしょくしょとく)とは、退職により勤務先から一時に受ける退職金などの所得をいい、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社または信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされます。

退職所得とは

退職所得とは「退職金」や「特定退職金共済からの一時金」「中小企業退職金共済からの退職金」など、退職時にもらえる退職手当をさし、「解雇予告手当」なども退職所得に該当します

給与所得の課税方法は、他の所得と合算して税額計算を行う「総合課税」ですが、退職所得は、他の所得と合算せずに税額計算を行う「分離課税」となります。

「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出した場合は、勤務先が所得税額及び復興特別所得税額を計算し、退職金から源泉徴収してくれるので、確定申告は必要ありません。

退職所得にかかる税金

退職所得は、給与所得や事業所得など10種類ある所得の一つですが、長年の勤労に対する報償的給与として一時に支払われるものであることから、退職所得控除を設け、他の所得と分離して課税する分離課税にするなど、税負担が軽くなるよう配慮されています。

退職所得にかかる税金は「所得税」と「復興特別所得税」と「住民税」の3つで、所得税の計算に用いる「退職所得控除」の金額は、勤続年数が長くなるほど大きくなります。

「復興特別所得税」については東日本大震災復興の財源として2037年まで納める必要があります。

退職所得にかかる税金の計算手順

退職所得にかかる税金の計算は、以下のような手順となります。

(1)「退職所得控除額」を算出

(2)「退職所得の全収入金額」から、「退職所得控除額」を引き、その金額に2分の1を掛け、「課税退職所得金額」を算出

(3)「課税退職所得金額」をもとに(A)「所得税額」を計算

(4)「所得税額」の2.1%になる(B)「復興特別所得税」を算出

(5)別途「課税退職所得金額」より(C)「住民税」を算出。

(6)(A)+(B)+(C)=退職所得にかかる税金の合計となります。

退職所得控除額の計算方法

退職所得控除額は、以下の表のように計算します。

勤続年数(=D)退職所得控除額
20年以下40万円 × D (80万円に満たない場合には、80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (D - 20年)

勤続年数の1年未満の端数は端数を切り上げます。

障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、算出金額に、100万円を加えた金額となります。

前年以前に退職金を受け取ったことがある場合や同一年中に2か所以上から退職金を受け取る場合などは、控除額の計算が異なることがあります。

課税退職所得金額の計算式

退職所得の課税退職所得金額の計算式は、原則として次のようになります。

課税退職所得金額 =(源泉徴収前の退職手当収入金額-退職所得控除額)×1/2

なお、確定給付企業年金規約に基づいて支給される退職一時金などで、従業員自身が負担した保険料または掛金がある場合には、その支給額から従業員が負担した保険料または掛金の金額を差し引いた残額を退職所得の収入金額とします。

退職所得の所得税額の計算式

退職所得の所得税額の計算は、以下の速算表より計算します。

課税退職所得金額税率控除額
1,000円〜194万9,000円5%0円
195万円〜329万9,000円10%9万7,500円
330万円〜694万9,000円20%42万7,500円
695万円〜899万9,000円23%63万6,000円
900万円〜1,799万9,000円33%153万6,000円
1,800万円〜3,999万9,000円40%279万6,000円
4,000万円〜45%479万6,000円

退職所得の復興特別所得税の計算式

退職所得の復興特別所得税の計算式は、次のようになります。

復興特別所得税額 = 課税退職所得金額 × 2.1%

退職所得の住民税の計算式

退職所得の住民税の計算式は、次のようになります。

住民税 = 課税退職所得金額 × 住民税率10%

退職所得にかかる税金の計算例

一般の従業員で勤続年数24年3か月・退職金額2,300万円の計算例です。

(勤続年数の端数は繰り上げます。)

退職所得控除額:800万 + 70万 × (25年 - 20年) = 1,150万

課税退職所得額:(2,300万 - 1,150万) × 1/2 = 575万

所得税額:575万 × 20% - 42万7,500 = 72万2,500

復興特別所得税額:72万2,500 × 2.1% = 1万5,172 ※1円未満切り捨て

住民税:575万 × 10% = 5万7,500

税総額:72万2,500 + 1万5,172 + 5万7,500 = 79万5,172円

役員退職手当の課税退職所得額の計算方法

特定役員退職手当等、役員等勤続年数が5年以下である人が受ける退職手当等のうち、その役員等勤続年数に対応する退職手当等の受け取り分は、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額が退職所得の金額になります(2分の1計算の適用はありません。)。

役員等とは、法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人ならびにこれら以外の者で法人の経営に従事している一定の者、国会議員および地方公共団体の議会の議員、国家公務員および地方公務員をさします。

短期退職手当等の課税退職所得額の計算方法

短期退職手当等(短期勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないもの)については、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額のうち300万円を超える部分については、2分の1計算の適用はありません。

「短期勤続年数」とは、役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数が5年以下であるものをいい、この勤続年数については役員等として勤務した期間がある場合、その期間を含めて計算します。

「退職所得の受給に関する申告書」について

「退職所得の受給に関する申告書」とは、退職金を受給者が支払い側に提出する申告書で、この申告書の提出によって、退職所得の額と所得税額が計算され源泉徴収が行われます。

提出先は、退職金は勤務先、退職共済金などは該当する組合に提出することが一般的で、遅くとも退職金の支払の処理が始まる日までには提出しましょう。

同年に他の退職手当を受け取っている人は、「退職所得の源泉徴収票」を1部、障害に該当する人は「障害者手帳のコピー」、生活扶助の有に該当した人は、生活保護決定通知書のコピーの添付が必要です。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出し忘れたら

「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れると、一律20.42%の税率で源泉徴収されるため、本来の税額よりも過大な税金を納めてしまう可能性がありますが、提出を忘れた場合は、確定申告を行えば還付金の受け取りが可能です。

確定申告をすることで、源泉徴収額より退職所得控除後の所得税額のほうが低い場合は、納めすぎた所得税の還付金を受け取れます。

退職所得のよもやま話・豆知識

死亡により相続人などが受け取る退職所得

被相続人の死亡によって、死亡後3年以内に支払が確定した退職金が、相続人などに支払われた場合には、その退職金は相続税の課税対象となり、所得税及び復興特別所得税の課税対象にはなりません。

相続人が取得した退職所得のうち相続税の課税対象となる金額は、〔500万円×法定相続人の数〕を超えた部分です。

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