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組織再編成税制

2023-04-122023-04-12

一言でいうと?

組織再編税制(そしきさいへんぜいせい)とは、平成13年度に導入された組織再編行為に関わる課税について包括的に定めた税制度のことで、組織再編税制のもとでは、税制適格要件を満たす組織再編については、資産・負債を簿価で引き継ぎ、課税が生じないような措置が取られています。

組織再編税制とは

組織再編税制は、合併や会社分割など組織再編行為に関わる課税関係ついて総合的に定めた税制度で、平成13年に導入されました。

一定の要件(税制適格要件)を満たす組織再編の場合には、資産・負債を簿価でそのまま引き継ぎ、課税が生じないよう課税を繰り延べる優遇措置が定められています。

一般的に資産を移転する際には、資産・負債は時価で評価され、譲渡損益に対して課税されますが、多額の税金が発生することとなり、適切な組織再編が阻害されるおそれがあるためこの制度が定められました。

組織再編成税制の対象類型

組織再編成税制の対象は以下のような類型があります。

・合併(吸収・新設)

・会社分割(吸収・新設)

・株式交換(発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社が取得)

・株式移転(発行済株式の全部を新設立の株式会社が取得)

・スクイーズアウト、キャッシュ・アウト(少数株主を退出させ100%子会社化)

・スピンオフ(自社内の特定の事業部門又は子会社を切り出し独立させる)

・現物出資(金銭以外の出資への対価の株式交付)

・現物分配(株の配当など株主への金銭以外の資産交付)

組織再編税制の適格組織再編と非適格組織再編

組織再編税制では税制適格要件を満たすかどうかで、課税関係が大きく異なります。

税制適格要件を満たす組織再編(適格組織再編)では、資産・負債を帳簿価額で引き継ぐため、課税が発生しません。

一方、税制適格要件を満たさない組織再編(非適格組織再編)では、資産・負債を時価で引き継ぐため、譲渡損益が発生し、課税が発生することになります。

組織再編税制では、組織再編行為をその実態から分類すると、適格組織再編は、純粋な組織の統合・分裂・再編成、非適格組織再編は、資産売買取引に近いものとなります。

資本関係により異なる組織再編成税制の税制適格要件

組織再編税制の税制適格要件は、企業グループ内で組織再編をする場合や、共同事業目的に組織再編をする場合、また、事業を独立させるために組織再編をする場合など、資本関係により異なり、以下の3パターンに分類されます。

(1)完全支配関係(100%グループ内での再編)

(2)支配関係(50%超グループ内での再編)

(3)共同事業(持分割合が50%以下の企業間での再編)

(1)から(3)へと資本関係が希薄になるに応じて満たさなければならない要件が増え、税制適格要件が厳格になっていきます。

組織再編成税制の「合併」の適格要件

【完全支配関係(100%グループ内)】

金銭等不交付要件

【支配関係(50%超グループ内)】

金銭等不交付要件、従業者引継要件、事業継続要件

【共同事業(企業間の持分割合が50%以下)】

金銭等不交付要件、従業者引継要件、事業継続要件、事業関連性要件、事業規模要件

または特定役員引継要件、株式継続保有要件

組織再編成税制の「分割」の適格要件

【完全支配関係(100%グループ内)】

金銭等不交付要件、按分型要件

【支配関係(50%超グループ内)】

金銭等不交付要件、按分型要件、従業者引継要件、事業継続要件、主要資産等引継要件、

【共同事業(企業間の持分割合が50%以下)】

金銭等不交付要件、按分型要件、従業者引継要件、事業継続要件、事業関連性要件、事業規模要件または特定役員引継要件、主要資産等引継要件、株式継続保有要件

組織再編成税制の「スピンオフ」の適格要件

【スピンオフ(分割型分割)】

按分型要件、非支配関係要件、主要資産等引継要件、事業継続要件、従業者引継要件、特定役員引継要件

【スピンオフ(株式配当)】

按分型要件、非支配関係要件、事業継続要件、従業者引継要件、特定役員引継要件

「完全支配関係・支配関係」の組織再編税制の税制適格要件の内容

(金銭等不交付要件)

親会社の株式以外の資産が対価として交付されないこと

(従業者引継要件)

組織再編対象会社の従業員の概ね80%以上に相当する数が、引き続き再編後の会社の業務に従事することが見込まれること

(事業継続要件)

主要な事業が、再編後の会社において営まれることが見込まれること

(按分型要件)

対価となる株式が組織再編前の各株主の有する株式の数の割合に応じて交付されること

(主要資産等引継要件)

分割法人の分割事業に係る主要な資産及び負債が分割承継法人に移転していること

「共同事業」の組織再編税制の税制適格要件の内容

上記完全支配関係・支配関係と重複するもの以外は以下の内容です。

(事業関連性要件)

主要な事業同士が相互に関連するものであること

(事業規模要件)

会社間の事業規模の差が売上高・従業員数・資本金のいずれかの指標で概ね5倍以内であること

(特定役員引継要件)

組織再編対象会社の常務取締役以上の特定役員が再編後の会社の特定役員になる見込みであること

(株式継続保有要件)

組織再編時の交付株式で、組織再編対象会社の支配株主への交付株式全部が当該支配株主に継続保有されることが見込まれていること

スピンオフの組織再編税制の税制適格要件の内容

スピンオフの組織再編税制の税制適格要件の内容は、上記完全支配関係・支配関係・共同事業と重複するもの以外は以下の内容です。

(非支配関係要件)

スピンオフ前に他の者による支配関係がなく、スピンオフ後も他の者による支配関係がないことが見込まれていること

組織再編税制における繰越欠損金

繰越欠損金とは、青色申告法人がある事業年度において生じた欠損金を、翌事業年度以降の所得の計算上、損金に算入できる制度です。

共同事業を行うための適格合併であれば、繰越欠損金の承継が可能で、企業グループ内の適格合併であれば、支配関係が合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日から継続していれば、繰越欠損金を承継が可能です。

支配関係の継続期間が足りない場合は、みなし共同事業要件を満たすことで、繰越欠損金の承継が可能となります。

組織再編税制における繰越欠損金のみなし共同事業要件

組織再編税制における繰越欠損金のみなし共同事業要件とは、次の1~4の要件か、1および5の要件に該当する場合をいいます。

1 事業関連性要件

2 事業規模要件(5倍を超えない)

3 被合併法人の事業規模継続要件(2倍を超えない)

4 合併法人の事業規模継続要件(2倍を超えない)

5 特定役員引継要件

みなし共同事業要件を満たさない場合、繰越欠損金の承継に制限がかかります。

組織再編税制における「みなし配当」の課税

組織再編税制における株式交付の授受に対するみなし配当の課税は、合併や分割、株式分配が適格要件を満たせば、みなし配当の課税も繰り延べできます。

ただし、組織再編においてみなし配当が生じるのは「非適格組織再編成」における「合併」と「分割型分割」のみになり、具体的なパターンとして以下のような交付が挙げられます。

合併:合併法人→被合併法人の株主への交付

分割:分割承継法人→分割法人の株主への交付(分割型分割)

株式分配:現物分配法人の完全子法人である会社→現物分配法人の株主への交付

組織再編税制とグループ法人税制の違い

組織再編税制に対して、グループ法人税制とは、同族特殊関係者などの出資者(主に株主で法人、個人どちらも有り)だけで構成されている一連の会社グループがある場合、その一連の会社グループ間で行った取引については原則として課税を繰り延べする制度です。

組織再編税制との違いは、組織再編は「合併」や「株式交換」といった自らアクションを起こして初めて課税関係が生じるという行為であるのに対して、グループ法人税制は一定の要件を満たした時は、すべてその取扱いが強制適用されます。

組織再編成税制のよもやま話・豆知識

組織再編成税制の「事前照会制度」

組織再編税制は複雑な規定が多く、わずかな再編手順の違いで税務上の取扱いが大きく異なるケースがあり、加えて、頻繁に税制改正がなされる分野でもあります。

税制の趣旨に合わない組織再編は、否認される可能性があるため、特に適格要件は、組織再編税制の対象になる合併や分割、株式交換などで確認を行う必要があります。

国税庁では、各国税局の審理課を窓口とする組織再編の「事前照会制度」を設けていますので、制度をうまく利用して、慎重に組織再編を進めましょう。

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