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贈与・贈与税

2023-01-272023-04-03

一言でいうと?

贈与(ぞうよ)とは、自分の財産を無償で相手方に贈るという意思表示をして、相手方がこれを承諾することによって成立する、いわば契約の一種で、贈与税(ぞうよぜい)とは、贈与によって財産を取得した人に課せられる税金で、つまりは個人から財産をタダでもらった場合に、取得した人にかかる税金ということになります。

贈与とは

贈与とは、贈与側が自分の財産を贈る意思表示を行い、受取側が承諾することにより成立する契約の一種で、一般的には贈与をする人は、贈与をするという意思表示をするために、贈与契約書などの証拠を残します。

贈与を受ける人は、贈与を受けたということを認識していることが条件となり、受け取った財産を自分自身で支配・管理します。

対価を受け取って譲り渡す譲渡と違い、贈与は無償での譲り渡しとなりますが、一方で、贈与には贈与税がかかり、一般的に相続税より税率が高いため、上手に利用することが必須となります。

贈与の種類

贈与には、一般的な贈与を含め以下の4つの種類があります。

贈与

定期贈与

死因贈与

負担付贈与

定期贈与

贈与者が受贈者に定期的に贈与することを約束する場合を定期贈与と言います。

毎年同じ時期に、同じ金額を贈与する定期贈与の場合、例えば100万ずつ10年贈与する、といった場合には、当初から1000万贈与するつもりであったとされ、贈与税が課税される可能性があります。

贈与税の節税対策としては、贈与税の非課税枠110万円以内で毎年贈与する場合には、毎年違う時期に、違う金額を贈与するなどの対策や、都度贈与契約書を結んでおくことが必要です。

死因贈与

死因贈与は、贈与者の死亡によって効力が発生する贈与のことを言い、生前に死因贈与の契約を交わすことによって、財産の受取人を決めておくことが可能です。

死因贈与と遺贈の違い

死因贈与は、遺言書による遺贈と似ていますが以下のような違いがあります。

死因贈与遺贈
当事者での合意の必要性必要あり必要なし
書面での合意を示す必要性必要あり必要なし

遺産を特定の人に渡したいだけであれば、遺贈でも十分ですが、遺言書は、相続人全員が遺言書に反対した場合、無理矢理実行させることは出来ません。

これに対して死因贈与は、贈与する方の意向を、贈与を受ける方は合意しているとみなされますので、贈与した方が亡くなった後、その意向を放棄することが出来ないのが特徴です。

負担付贈与

受贈者が贈与者に対して、一定の負担を負わせる場合の贈与を負担付贈与と言います。

例えば「家を贈与する代わりに、残りの住宅ローンを支払う」「現金を贈与する代わりに、介護をしてほしい」と言った贈与が当てはまります。

負担付死因贈与契約

負担付死因贈与契約とは、贈与をする方が贈与を受ける方に何らかの義務や負担を強いることができるもので、死因贈与契約に負担が付いた契約となり、意思を確実に実現したい場合は有効です。

負担付死因贈与契約は、遺言書よりも実行度合が強く、成年後見よりも自由度が高い制度で、「自身に介護が必要になった場合、面倒を看てくれたら、死亡した時に財産を贈与する」ようなケースで利用されることがあります。

死因贈与と負担付死因贈与契約の注意点

死因贈与の手続きにおいて注意すべきことは、契約内容が不明確だったり、他の相続人と利害が対立したりなどトラブルが発生することです。

トラブルを避けるため、贈与の対象や負担の内容などを明確に記載しておくことが大切で、不動産の登記簿の正確な記載や預貯金では銀行名や口座番号、名義人を明示します。

死因贈与も遺言書と同様に、執行者を指名することが可能で、司法書士などの専門家を指定しておけば、執行が確実に進められることでしょう。

また死因贈与は、生前贈与と同様に不動産取得税の課税対象となります。

贈与税の種類

贈与税の納税は「暦年贈与(課税)」と「相続時精算課税」から選択します。

「暦年贈与」では、年末から年始までの1年間に受けた贈与額が110万円以下ならば贈与税が非課税になり、110万円を超えると贈与税の累進課税の税率が適応されます。

「相続時精算課税制度」は、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前に2500万円まで非課税で贈与できる制度で、相続時には相続財産として加算されますが、贈与時の時価で加算されるため、時価が上がりそうな財産に対しては節税の効果が見込めます。

暦年贈与の「生前贈与加算」

「生前贈与加算」は、相続税逃れの贈与を防ぐための制度で、2024年以前は、贈与が相続時より遡って課税対象に加算される年数は3年でしたが、2023年の相続税改正で改定され、2024年1月1日以降の贈与から、遡り加算年数が7年となります。

ただし2024年1月1日以前の贈与の加算年数は3年なので、実際には2027年以降の相続から加算年数が3年より長くなり、2031年1月以降、丸々7年加算されますが、延長された4年の間の贈与については、総額100万円までは相続財産に加算しなくてもよいとされました。

生前贈与のさまざまな控除

結婚20年以上の夫婦で、住み続ける持ち家(土地)を配偶者に贈与する場合、配偶者控除2,000万円と贈与税の110万円の控除と合わせて2,110万円まで控除できます。

親や祖父母から、30歳未満の子や孫へ「教育資金」を贈与する時の非課税限度額は最高1,500万円、また18歳以上の子や孫へ「住宅取得等資金」を贈与する時の非課税限度額は、条件により500万円または1,000万円です。

親や祖父母から、18歳以上50歳未満の子や孫へ「結婚・子育て資金」を贈与する非課税限度額は1,000万円です。

贈与税の計算方法

贈与税の計算は、まず、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計し、その合計額から基礎控除額110万円を差し引き、残りの金額に税率を乗じて税額を計算します。

平成27年以降の贈与税の税率は、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分され一般的には、基礎控除額の110万円を差し引いた後の金額を当てはめて速算表で計算します。

一般贈与財産の一般税率による贈与税速算表

兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合など「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税は一般税率で計算します。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%0円
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

特例贈与財産の特例税率による贈与税速算表

贈与を受けた者が、贈与を受けた年の1月1日において18歳(令和4年3月31日以前は20歳)以上の者の場合で、父母や祖父母などの直系尊属から贈与により取得した財産に係る贈与税は、特例税率で計算します。(夫の父からの贈与等には使用できません)

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%0円
400万円以下15%10万円
600万円以下20%25万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の贈与税の計算例

「一般贈与財産」

500万円の贈与の場合の贈与税計算

基礎控除後の課税価格 500万円 - 110万円 = 390万円

贈与税額の計算 390万円 × 20% - 25万円 = 53万円

「特例贈与財産」

500万円の贈与の場合の贈与税計算

基礎控除後の課税価格 500万円 - 110万円 = 390万円

贈与税額の計算 390万円 × 15% - 10万円 = 48.5万円

「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の両方がある場合の計算

18歳以上の人が、一般贈与財産100万円、特例贈与財産400万円の贈与を受けた場合の贈与税額の計算です。

まず、(A)合計価額500万円から控除110万円を引き、その金額すべてを「一般贈与財産」として税額を計算し、その金額のうち、一般贈与財産に対応する割合の税額を出します。

次に(B)合計価額500万円から控除110万円を引き、その金額すべてを「特例贈与財産」として税額を計算し、その金額のうち、一般贈与財産に対応する割合の税額を出します。

最後に(A)(B)の合計金額を出します。

「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の両方がある場合の計算式例

以下は、上記例の実際の計算式となります。

(A)

500万円 - 110万円 = 390万円

390万円 × 20% - 25万円 = 53万円

53万円 × 100万円 / (100万円+400万円) = 10.6万円

(B)

500万円 -110万円 = 390万円

390万円 × 15% - 10万円 = 48.5万円

48.5万円 × 400万円 / (100万円 + 400万円) = 38.8万円

(A)+(B)

10.6万円 +38.8万円 = 49.4万円

贈与のよもやま話・豆知識

相続税と贈与税の一体化とは

元々、贈与税は相続税を補完する役割で設けられた税金ですが、近年これらを一体化する税制改正が検討されています。

相続税と贈与税が異なる体系で存在している現行の税制では、多額の相続財産を有する人が相続税の累進負担を回避できるので、中立的ではないという意見もあります。

欧米では、贈与か相続かで税負担が変わることはなく、一生の税負担が一定です。

日本でも2023年の相続税改正で、「生前贈与加算」の遡り年数が3年から7年に改正されたことを皮切りに、今後さらに議論が重ねられていくことが予想されます。

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