老年者控除
2023-03-102023-03-10
一言でいうと?
老年者控除(ろうねんしゃこうじょ)とは、高齢者の納税者が受ける事が可能な所得控除で、一定の条件を満たす高齢者が、所得税、住民税において、プラスの控除が受けられる制度でしたが、老年者控除は、現在は廃止されています。
老年者控除とは
老年者控除は、所得が1,000万円以下の65歳以上の高齢者において、基礎控除以外に、所得税では50万円、地方税(住民税)では48万円を所得から控除する制度です。
老年者控除を受ける条件の合計所得額は、株式売却益も含まれ、総所得金額以外に、株式等における譲渡所得の金額や、先物取引による雑所得の金額、また山林所得金額と退職所得金額も含まれます。
ただし純損失や、その他一定の損失に対して特例の適用を受けている場合には、その適用前の合計金額が考慮されますが、寡婦控除や寡夫控除は併用することができません。
老年者控除の廃止
老年者控除の廃止は、平成17年分以後の所得税及び、平成18年度分以後の個人住民税より適用され、現在は控除を受ける事が出来ません。
老年者控除廃止に際し、住民税については経過措置として、平成17年1月1日に65歳に達していた人で、前年の合計所得金額(控除後の金額)が125万円以下の人は、税額を平成18年度は3分の2を、平成19年度は3分の1を減額する措置がとられました。
その後、旧民主党のマニュフェストに老年者控除の復活が取り上げられたりしつつも、税負担のバランスもあり復活は難しい状況です。
老年者控除廃止と公的年金等控除の見直し
平成16年度の税制改正で、老年者控除の廃止とともに、公的年金等控除も見直しをされ、65才以上の最低保障額が140万円から120万円に引き下げられました。
また平成30年度税制改正で、令和2年分からは、基礎控除が一律10万円引き上げられた代わりに給与所得控除・公的年金等控除がそれぞれ10万円引き下げられ、令和5年現在、65才以上の公的年金等控除の最低保障額は110万円です。
個人住民税所得割の税額は(収入 - 控除)× 税率で算出されますので、老年者控除や公的年金等控除は、この控除に該当します。
老年者控除の廃止の背景
老年者控除が廃止された背景には、少子高齢化社会により、高齢者の割合が増え、多くの高齢者が社会活動をする中で、税の公平を図る為という理由があります。
老年者控除は、年齢のみを基準に65歳以上の大部分の方に適用され、優遇する措置であったこと、公的年金等控除は、特に65歳以上の高齢者を経済力にかかわらず一律に優遇していたこと、これらの優遇措置の結果、65歳以上の年金受給者の課税最低限は現役世代の給与所得者よりも極めて高い水準となっていたため、高齢者の担税力に応じた負担を求めることにしたものです。
老年者控除の廃止の影響
70歳以上の扶養された親族の老人扶養親族と生計を一にしている納税者は、一定の扶養控除を受けられますが、老人扶養親族は、年間所得金額が合計48万円以下であることが要件とされています。
老年者控除の廃止や公的年金等控除の見直しにより控除額が変わることにより、老人扶養親族であった人が、その条件からはずれ、老人扶養親族と生計を一にしている納税者が、扶養控除が受けられなくなる可能性があります。
老年者控除のよもやま話・豆知識
老年者控除と高齢者や年金受給者をめぐる税制
老年者控除は廃止されましたが、その他にも高齢者や年金受給者をめぐる税制には、優遇措置があります。
70歳以上には配偶者控除が上乗せされることや、遺族年金は非課税であること、働きながら年金を受け取った場合に給与所得控除と公的年金等控除の両方を受けられるという優遇措置があります。
今後は、低所得者層への加算の是非や若年層と高齢者の税の公平など、さらに税負担のバランスが議論されると予想されます。