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暦年課税・暦年贈与

2022-12-202022-12-20

一言でいうと?

暦年課税(れきねんかぜい)・暦年贈与(れきねんぞうよ)とは、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与額が110万円以下である場合、贈与税は発生しないという課税方式のことで、暦年課税・暦年贈与は、またの名を暦年贈与ともいいます。

暦年課税・暦年贈与とは

暦年課税・暦年贈与とは、年初から年末までの1年間に受けた贈与額が110万円以下ならば、贈与税が非課税になるという方式で、この控除を使えば、生前のうちに所有財産を少しずつ非課税で第三者に移し、将来に発生する相続税の負担を軽減させることが可能となります。

暦年課税・暦年贈与は、贈与税であり110万円を超えると贈与税の累進課税の税率が適応されますが、元々、贈与税がかからない扶養家族から渡される生活費や、宗教の一定の収入、障がい者支給金、教育資金や奨学金などで一定の条件に適うものは、非課税となります。

暦年課税・暦年贈与の特徴

暦年課税・暦年贈与は、誰でも利用できる制度で、贈与財産の種類にも制限はなく、現金、預貯金、有価証券、不動産などのあらゆる財産の贈与が暦年課税・暦年贈与の対象となります。

財産を贈与された場合だけでなく、債務の免除を受けたり、市場価格よりも著しく低廉な価格で物を売ってもらったりした場合も、その利益について暦年課税・暦年贈与の対象となります。

ただし2024年1月からは、贈与を受けた日から7年以内(2024年以前は3年)に贈与者が亡くなってしまった場合には、その生前贈与はなかったものとみなされ、「生前贈与加算」として相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。

暦年課税・暦年贈与の「生前贈与加算」とは

生前贈与加算は、亡くなる直前での相続税逃れの駆け込み贈与を防ぐため、2024年1月から、死亡日前7年(2024年以前は3年)以内の贈与を無効とする制度で、暦年課税・暦年贈与もその対象です。

その財産には、みなし相続財産も含まれ、生命保険金や死亡退職金など、民法上の相続財産ではない相続税の対象となる財産が含まれます。

また、相続財産に加算される金額は、相続時の時価ではなく、贈与時の時価となり、すでに納めた贈与税額がある場合には、その贈与税額を相続税から控除することができます。

相続税の対象は、推定相続人への贈与であり、推定相続人以外の人への贈与には2024年1月からは死亡日前7年(2024年以前は3年))以内の贈与であっても相続税はかからず、暦年課税・暦年贈与も認められます。

孫に対する暦年課税・暦年贈与の生前贈与加算

祖父母の孫は、推定相続人とならないため暦年課税・暦年贈与は、生前贈与加算に計上されませんが、以下の場合は、暦年課税・暦年贈与であっても生前贈与加算となります。

祖父母の子が亡くなり、孫が法定相続人になった場合

孫が祖父母の養子になった場合

遺言によって財産が孫に遺贈された場合

孫が生命保険金の受取人の場合

生前贈与加算の対象者は、法定相続人かどうかではなく、「実際に相続や遺贈によって財産を取得したかどうか」によって判断されます。

暦年課税・暦年贈与が生前贈与加算とならない特例

以下のいずれかの贈与税の特例制度を適用した部分には、2024年1月からは、死亡日前3年(2024年以前は3年)以内の贈与であっても、暦年課税・暦年贈与や贈与税、相続税の生前贈与加算の対象とはなりません。

贈与税の配偶者控除

結婚・子育て資金の一括贈与

教育資金の一括贈与

住宅取得等資金の贈与

「暦年課税・暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の比較

相続時精算課税制度とは、暦年課税・暦年贈与とよく対比される制度で、贈与者は60歳以上の父母または祖父母など、受贈者は18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属である推定相続人または孫とされており、2500万円までは、贈与税が非課税になるという制度です。

2500万円を超えた額は、一律20%の税率を乗じて算出します。

相続時精算課税と暦年贈与は併用ができず、相続時精算課税制度を選ぶと、以降その人からの贈与は暦年贈与に戻すことはできませんが、別の人からの贈与においては暦年贈与の選択が可能です。

相続時精算課税制度の特徴と暦年課税・暦年贈与との違い

相続時精算課税制度を使って贈与した財産は、暦年課税・暦年贈与と違い、結局、相続時には精算し相続財産として加算されますが、贈与時の時価で加算されるため、時価が上がりそうな財産に対しては節税の効果が見込まれます。

また一括で2500万円まで贈与できる利便性、相続税と贈与税の税率の差などで暦年課税・暦年贈与と並んで魅力のある制度となっています。

暦年課税・暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを選ぶか

「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」のどちらにもそれぞれのメリットがあり、どちらを選ぶ方が節税効果が高いかは、社会情勢や人それぞれの財産の状況によっても大きく違ってきます。

相続時精算課税制度と比べた暦年課税・暦年贈与のメリット

暦年課税・暦年贈与の基礎控除110万円は、贈与を受けた人1人に対する1年ごとの金額なので、贈与を受ける者の人数と年数が多いほど、非課税で贈与できる金額が多くなるのが暦年課税・暦年贈与のメリットです。

全財産が、法定相続の控除額を超え相続税が発生すると予想される相続の場合、長期で毎年、暦年課税・暦年贈与の110万控除内での移動が可能であれば、節税の効果が大きいと言えるでしょう。

ただし、被相続人の亡くなる時期など不確定要素も加味しなければなりませんので、詳しくは税理士さんや弁護士さんに相談しましょう。

暦年課税・暦年贈与と比べた相続時精算課税制度のメリット

短期間で大きな金額を移動させたい、または移動させないといけない場合は、暦年課税・暦年贈与の累進課税より、相続時精算課税制度の方が節税できる可能性があります。

また財産の価値が値上がりする可能性の大きい財産がある場合は、仮に相続発生時にその財産の価額が高騰しても、贈与をした時点の低い価額で相続税が計算されますので、メリットになる場合があります。

収益不動産がある人も相続時精算課税で節税できる可能性がありますので、詳しくは税理士さんや弁護士さんに相談しましょう。

暦年課税・暦年贈与の利用の流れ

暦年課税・暦年贈与の利用は、贈与契約書を作成し、資金の受け渡しを行い、贈与金が110万円以上の場合は贈与税の申告を行うという流れになります。

贈与契約書は、自署し、贈る側・贈られる側が各々実印で押印して、「誰から誰に贈ったか」「金額」「年月日」をしっかり記載して後付けでない事実としておくと、暦年課税・暦年贈与の非常に有効な証拠となります。

作成した贈与契約書は、公証人役場で「確定日付」のスタンプを押し公正証書化することもできます。

暦年課税・暦年贈与の適用における2つの注意点

暦年贈与をしたつもりでも、税務署から「定期贈与」や「名義預金」であると判断された場合には、贈与税や相続税がかかる可能性がありますので、暦年贈与であるという明確な位置付けが必要となります。

また暦年贈与は「定期贈与」や「名義預金」との違いのあいまいさや、相続税逃れになる可能性なども指摘され、廃止や生前贈与加算の遡り年数の見直しが検討されているという噂は常に絶えません。

暦年課税・暦年贈与と間違われやすい「定期贈与」

暦年課税・暦年贈与は、「定期贈与」と判断されると贈与税の対象となります。

「定期贈与」とは定期的に行う贈与で、例えば、毎年100万円ずつの贈与を10年間行う約束を交わした場合には、総額1,000万円の年金を贈与する契約を贈与したとみなされ、最初の贈与年において1,000万円に対しての贈与税が課されます。

「10年間、毎年100万円を贈与」といった贈与契約書を作成すると明確な「定期贈与」となりますが、毎年100万円ずつ贈与して、結果的に10年間で1000万円になったという場合は、「連年贈与」となり、贈与税はかかりません。

暦年課税・暦年贈与と間違われやすい「名義預金」

もうひとつ暦年課税・暦年贈与だと認められない可能性が高いものとしては、実際の預金者と口座の名義人が異なる「名義預金」があります。

贈与は、原則として財産を渡す方と受け取る方、両者の同意が必要で、親が子の知らないところで子名義の口座に預金を振り込んでいた場合には、贈与とは認められず、毎年110万円以下の入金であっても暦年課税・暦年贈与ではなく名義預金と判断され、相続税の課税対象となってしまいます。

暦年課税・暦年贈与が「定期贈与」「名義預金」と判断されないための対策

暦年課税・暦年贈与が定期贈与と判断されないためには、贈与ごとの契約書の作成、贈与のタイミングの都度変更、贈与金額を一定にしないなどがあります。

契約書は、毎年贈与することや合計総額を記載すると定期贈与となりますが、各年の贈与に応じて制作することで、暦年課税・暦年贈与の対象である証拠となります。

また名義預金と判断されないためには、贈与契約書を作成する、金融機関への届出印を受贈者の印にする、受贈者が届出印・通帳・キャッシュカードを管理して自由に使えるようにして贈与された預金をいくらか使用しておくなどが有効です。

不動産の暦年課税・暦年贈与適用の注意点

土地や建物は、複数の人が共同して所有者になることが可能で、自分の持分をさらに細かく分けて暦年課税・暦年贈与を適用して譲り渡すこともできます。

定期贈与にならない手段で小分けすれば、かなり節税になりますが、不動産贈与の際には、司法書士や税理士などへ支払う費用も発生します。

実際には5回、10回などに分けて贈与した場合、毎回登記申請手続きや不動産の価格算定、また贈与税の申告などに司法書士、税理士費用がかかり、暦年課税・暦年贈与のメリットがなくなることもありますので、諸経費を考慮した全体で判断することが大切です。

暦年課税・暦年贈与のよもやま話・豆知識

暦年課税・暦年贈与が難しい不動産

暦年課税・暦年贈与は手間がかかるので、不動産を子に格安で売ろうと考える人もいるでしょう。

親が持つ時価2000万円の土地を1万円で子に売るという常識的とはいえない安い価格で財産が渡されることを「低額譲渡」といいます。

低額譲渡があった場合には、時価との差額について、贈与税の対象になるとされていますので注意が必要です。

国税庁のホームページには「個人から著しく低い価額の対価で財産をゆずり受けた場合には、その財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額は、財産を譲渡した人から贈与により取得したものとみなされます」とありますので、1999万円分には暦年課税・暦年贈与の控除を超えた贈与税がかかることになります。

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