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納税の猶予

2023-02-082023-02-08

一言でいうと?

納税の猶予(のうぜいのゆうよ)とは、期限内の納税が難しい場合に、申請により税務署長の許可を受けて、期限後に(必要に応じ分割して)納税ができるようになる制度で、猶予を受けるためには一定の要件を満たす必要がありますが、猶予期間中は、延滞税が軽減または免除されます。

納税の猶予とは

納税の猶予は、諸事情により納税が難しい場合に、1年間の猶予を与える制度で、納税の方法は、1年間据え置かれる場合、猶予期間中に分割納付をする場合があります。

猶予期間中の延滞税の軽減については、令和4年において年 8.7%の割合が年0.9%の割合となっています。

地方消費税や地方譲与税なども同じように対象となり、ほぼ全ての税目が対象となりますが、印紙で納付する印紙税、外国貨 物を保税地域から引き取る場合の消費税や出国する際に直接税関長に納付する方式の国際観光旅客税については対象となりません。

納税の猶予の種類

通則法に規定する納税の猶予には、以下の3つの種類があります。

「相当な損失を受けた場合の納税の猶予」

災害により、その財産に相当な損失を受けた場合の、納期限が到来していない一定の国税の猶予

「通常の納税の猶予」

災害や病気が理由で、事業の休廃止をした場合の国税の猶予

「一定期間後に税額が確定した場合の納税の猶予」

一定の期間が経過した後に納付すべき税額が確定した場合の国税の猶予

「相当な損失を受けた場合の納税の猶予」の要件

この納税の猶予は、災害により全積極財産のおおむね20パーセント以上の損失を受けた場合、基本的に納期限がその損失を受けた日以後に到来するものが該当します。

また災害を受けた場合の取扱いについては、「災免事務取扱要領」の定めにより処理されます。

この納税の猶予を受けるためには、原則として猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供が必要ですが、猶予金額が100万円以下、猶予期間が3か月以内または特別の事情がある場合は不要です。

「通常の納税の猶予」の要件

通常の納税の猶予を認められるのは、次に掲げる要件の全てに該当する場合です。

・納税者に猶予該当事実があること。

・猶予該当事実に基づき、納税者がその納付すべき国税を一時に納付することができないと認められること。

・納税者から納税の猶予の申請書が提出されていること。

・相当な損失を受けた場合の納税の猶予の適用を受ける場合でないこと。

・原則として、納税の猶予の申請に係る国税の額に相当する担保の提供があること。

(100万円以下、猶予期間が3か月以内または特別の事情がある場合は不要)

「通常の納税の猶予」の要件の「猶予該当事実」とは

「通常の納税の猶予」の要件の「猶予該当事実」とは、以下のようなやむを得ない理由により生じたものに限られます。

納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災、ガス爆発やその他の自然災害を受けたり、又は盗難にあったこと

納税者又はその者と生計を一にする親族(六親等内の血族、配偶者及び三親等内の姻族)が病気にかかったり、又は負傷したこと

納税者に事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実があること

納税者の経営する事業に労働争議があり、事業を継続できなかったこと

「一定期間後に税額が確定した場合の納税の猶予」の要件

一定期間後に税額が確定した場合の納税の猶予は、納税者に法定申告期限等より1年を経過した日以後に納付すべき税額の確定手続等が行われた国税があり、納税者がその国税を一時に納付することができない理由があると認められる場合において、その納付困難な金額を限度として、納税者の申請に基づき、1年の範囲内で納税を猶予するもので、要件は、「通常の納税の猶予」の要件とほぼ同じとなります。

災害による納税の猶予について

災害による納税の猶予は、相当な損失を受けた場合の納税の猶予と災害等を受けたことにより納付が困難な場合の通常の納税の猶予の2つがあります。

納税の猶予期間は、原則1年以内ですが、やむを得ない理由がある場合は既に認められている猶予期間と合わせて2年を超えない期間内で、申請により猶予の延長を受けられます。

よって同一の災害において、相当な損失を受けた場合の納税の猶予と災害等を受けたことにより納付が困難な場合の通常の納税の猶予プラスその猶予期間の延長により、最長3年間の猶予を受けることができます。

納税の猶予と換価の猶予

国税の猶予には「納税の猶予」の他にもうひとつ「換価の猶予」があります。

換価の猶予とは、すでに差し押さえされている財産、あるいは今後差し押さえの対象となりうる財産の換価処分(公売)を、一定の要件に該当した場合に猶予し分納を認めるという制度です。

特に原因は限定されておらず、事業の継続や生活の維持が難しい場合に広く認められ、納税の猶予が、必ずしも滞納を前提にした制度ではないのに対し、換価の猶予は滞納整理の中での納税緩和制度です。

なお換価の猶予の申請期限は、国税納付期限から6か月以内です。

納税の猶予と換価の猶予の併用の可否

換価の猶予を受けている国税について、その猶予期間中に通常の納税の猶予の申請があった場合において、納税の猶予の要件に該当するときは、その換価の猶予を取り消した上で、納税の猶予を適用します。

納税の猶予の申請をするための必要書類

納税の猶予の申請をするための必要書類は、その状況や種類によって変わってきます。

書類を提出したあとは、税務署で審査が行われ、猶予が許可された場合には、「納税の猶予許可通知書」が申請者に送られます。

納税の猶予の申請金額が100万円以下の場合の必要書類

納税の猶予の申請金額が100万円以下の場合の必要書類は以下のようになります。

(1)納税の猶予の申請書

(2)災害等により納付困難となった場合の納税の猶予を申請する場合には、猶予該当事実があることを証する書類

(3)財産収支状況書

(4)納税の告知がされていない源泉徴収等による国税の猶予を申請する場合には「所得税徴収高計算書」

(5)登録免許税の猶予を申請する場合には、登録等の事実を明らかにする書類

納税の猶予の申請金額が100万円を超える場合の必要書類

納税の猶予の申請金額が100万円を超える場合の必要書類は以下のようになります。

(1)納税の猶予の申請書

(2)災害等により納付困難となった場合の納税の猶予を申請する場合には、猶予該当事実があることを証する書類

(3)財産目録

(4)収支の明細書

(5)納税の告知がされていない源泉徴収等による国税の猶予を申請する場合には「所得税徴収高計算書」

(6)登録免許税の猶予を申請する場合には、登録等の事実を明らかにする書類

(7)担保の提供に関する書類

納税の猶予で1年以内に完納が見込まれない場合の取扱い

納付能力調査の結果、納税の猶予をしようとする国税の完納までに要する期間が1年を超えると認められるときは、猶予期間を1年間とし、1年を超える部分の金額は猶予期間の最終月の分割納付金額として処理するものとなります。

納税の猶予のよもやま話・豆知識

納税の猶予と期限延長の違い

納税の猶予制度は、期限後に(必要に応じて分割して)納税ができるようになる制度であり、申告・納付期限そのものが延長されるわけではありません(国税通則法46条、国税徴収法152条1項)。

これに対し、申告・納付期限の延長は、外出自粛要請や交通の途絶などにより、申告や納税などの行為自体ができない場合に、税務署長へ申請をすることにより、申告・納付期限を延長できる制度です(国税通則法11条)。

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