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みなし相続・みなし相続財産

2023-02-282023-02-28

一言でいうと?

みなし相続・みなし相続財産(みなしそうぞく・みなしそうぞくざいさん)とは、被相続人が所有していた民法上の相続財産ではありませんが、被相続人が亡くなったことで相続人のものになった財産及びその相続のことで、みなし相続財産も被相続人が所有していた財産と同じく、被相続人が亡くなった場合に相続財産とみなされ、相続税が課税されます。

みなし相続・みなし相続財産とは

みなし相続・みなし相続財産とは、生前に被相続人に帰属していた財産ではないものの、死亡によって発生する、ほぼ相続財産と変わりない財産及びその財産を相続することを意味し、代表的なみなし相続財産は、生命保険金や死亡退職金です。

みなし相続財産は、厳密には、直接受取人に支給されるものですが、法的には、被相続人の死亡により相続人が財産を取得することになるので、税法上、相続財産として扱われて相続税が課税されます

ただし、みなし相続財産は、法律上は相続財産ではないので、遺産分割協議の対象とはなりません。

みなし相続・みなし相続財産の種類

みなし相続・みなし相続財産とされるものには以下のような種類があります。

・生命保険金

・死亡退職金

・暦年贈与の生前贈与加算

・弔慰金

・公共法人等から受ける利益

・信託受益権

・定期金

・特別縁故者への分与財産

・債務の免除

・低額譲渡

みなし相続財産となる生命保険金

被相続人の死亡により相続人が生命保険金を受け取る場合で、生命保険金の保険料を被相続人が負担していた場合には、みなし相続財産となります。

みなし相続財産として、死亡保険金に相続税がかかるときは、法定相続人1人あたり500万円の非課税限度額があり、非課税限度額を超える部分が課税対象になります。

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

また相続放棄をしていても非課税限度額の法定相続人の数に入り、生命保険は受け取ることができ、相続税もかかります。

みなし相続財産となる生命保険金の注意点

みなし相続財産となる生命保険金は、死亡した被保険者が保険料負担者である場合ですが、生命保険が満期の場合は贈与税の対象となります。

また保険料負担者と受取人が同一の場合は、所得税や住民税の対象となり、死亡した人・保険料負担者・受取人がすべて違う場合は贈与税の対象となります。

生命保険は契約内容によって課税が変わり、みなし相続財産となり非課税枠が適用されるものもあれば、非課税枠が使えないものもありますので、契約内容には十分注意しましょう。

みなし相続財産となる死亡退職金

死亡退職金とは、被相続人が勤務先等から本来受け取る予定の退職金(退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与)で、被相続人の遺族に対して支払われる退職金のことをいい、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされ相続税の課税対象となります。

ただし、死亡退職金については、その受取人が相続人である場合、以下の計算通り一定の非課税枠があるため、受け取った死亡退職金の合計額が非課税枠の範囲内であれば、相続税は課税されません。

退職手当金等の非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

みなし相続財産となる死亡退職金のさまざまなルール

みなし相続財産となる死亡退職金の受け取りでは、退職手当金等の非課税限度額の法定相続人の数には、相続放棄した者を含みますが、法定相続人以外の第三者が受取人の場合は、非課税枠はありません。

また法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

退職金を受け取る時期 によっては、税目がかわり、死亡後3年以内に遺族が受け取った退職金は、相続税の対象となりますが、死亡後3年経過後に遺族が受け取った退職金は、一時所得となり所得税の対象となります。

みなし相続財産となる暦年贈与の生前贈与加算

死亡する前に多額の財産を身内に贈与することによって、相続税の課税を免れることを防ぐため、被相続人から生前に財産の贈与を受けている場合は、被相続人の死亡前の一定年数を遡って、原則として贈与された財産の価額を、みなし相続財産として相続財産の価額に加算します。

これをみなし相続財産となる「暦年贈与の生前贈与加算」と呼び、2023年に法改正されました。

みなし相続財産となる暦年贈与の生前贈与加算の2023年の相続税改正

生前贈与加算は、相続税逃れの贈与を防ぐための制度で、2024年以前は、贈与が、死亡時より遡ってみなし相続財産として課税対象に加算される年数は3年でしたが、2023年の相続税改正で改定され、2024年1月1日以降の贈与から、遡り加算年数が7年となります。

ただし2024年1月1日以前の贈与の加算年数は3年なので、実際には2027年以降の相続から3年より長くなり、2031年1月以降、丸々7年加算されますが、延長された4年の間の贈与は、総額100万円までは相続財産に加算しなくてもよいとされました。

みなし相続財産となる弔慰金

弔慰金とは、企業・団体などの雇用主が故人の功労に対して支給する金銭で、勤続年数などの条件に従って、企業や団体が定めた金額が支給されます。

弔慰金のほか、雇用主からの花輪代や葬祭料は、名目にかかわらず一定額を超えると死亡退職金として扱われます。

被相続人の死亡が業務上の死亡であるときは、被相続人の死亡当時の普通給与×3年分、被相続人の死亡が業務上の死亡ではないときは被相続人の死亡当時の普通給与×半年分の条件を満たせば、弔慰金などが死亡退職金として扱われます。

みなし相続財産となる信託受益権

遺産を信託銀行などに預けて、管理や運用を任せることを「信託」と呼びますが、被相続人が信託をおこなっていた場合、その結果生まれた利益は、相続人が受け取ることができます。この権利を指して「信託受益権」といい、これも相続税の課税対象です。

信託を委託した者以外が利益を受け取る場合は、誰が受取人であっても相続税が発生します。

みなし相続財産となる公共法人等から受ける利益

公益を目的とする法人に対して財産を遺贈した場合で、その法人が施設の利用や余裕金の運用について特定の者に特別の利益を与える法人であるときは、特別の利益を受けた者がその利益分の遺贈を受けたものとみなされ、みなし相続財産となります。

みなし相続財産となる定期金

みなし相続財産となる定期金とは、個人年金や郵便局の年金などのように定期的に支給されるものをいい、被相続人が個人年金の掛け金を支払っていて、年金の受取人が配偶者や子供になっていた場合は、年金もみなし相続財産となります。

被相続人が死亡した時点でまだ年金の給付が決定されていない場合でも、相続税が課税されます。

その他、確定給付企業年金もみなし相続財産となりますが、亡くなった時期によって死亡退職金等の非課税枠の対象となるか否かが異なります。

みなし相続財産となる特別縁故者への分与財産

身体の不自由な被相続人の世話をしていた知人などは、家庭裁判所への請求によって「特別縁故者」と認められれば遺産の分与を受けられますが、請求は、期間の満了後3か月以内にしなければなりません。

特別縁故者として財産分与を受けた場合の扱いは「遺贈」となり、みなし相続財産として相続税が課税されます。

なお、財産分与を受けた特別縁故者は、被相続人の配偶者・一親等の血族に該当しないので、相続税の2割加算を受けます。

みなし相続財産となる債務の免除

遺言によって、被相続人に対する借金が帳消しになった、あるいは遺産で第三者からの借金を肩代わりしてもらったというケースでは、免除された債務がみなし相続財産となります。

みなし相続財産となる債務の免除

遺言によって、本来の時価よりかなり低い価格で財産を取得したときは、時価と売買価格の差額に対して、みなし相続財産として相続税が課税されます。

亡くなった父が、遺言で子供に時価8,000万円の土地を2,000万円で売却した場合などがこれにあたります。

みなし相続財産ではないが相続税がかかる相続時精算課税制度

みなし相続財産ではないものの、生前に被相続人から贈与を受け、相続時精算課税制度の適用を選択していた場合、贈与時の価額によって、相続税の課税上、相続財産の価額に加算されます。

みなし相続・みなし相続財産と相続放棄

相続放棄をすると、被相続人に属する一切の財産(権利義務)、当然借金なども相続はされませんが、みなし相続財産は、本来は相続財産ではありませんので、生命保険金などは、受取人に指定されていれば、相続放棄をしていても当然に生命保険金を受け取ることになり、相続税の課税対象となります。

相続を放棄しているから相続税がかかるはずがないと思っていたら実は納税義務があったという事もありえます。

このように相続財産ではないのに、生命保険金や死亡退職金のように相続財産とみなされてしまう、みなし相続財産には注意が必要です。

みなし相続・みなし相続財産のよもやま話・豆知識

みなし相続財産の内密性

みなし相続財産は、法律上は相続財産ではありませんので遺産分割協議の対象とならず、

受取人固有の財産なので、受け取りに際して他の相続人の同意を得る必要もないので、金額を他の相続人に知られることなく受け取りの手続きができます。

ただし、金額が大きく、法定相続の非課税限度額の範囲を超えた場合、相続税申告書に、みなし相続財産の金額が書かれますので、他の相続人に受け取った金額を知られることになります。

なお、相続税申告がなければ、他の相続人に受け取り金額を知られることはありません。

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