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未分割財産

2022-11-302022-11-30

一言でいうと?

未分割財産(みぶんかつざいさん)とは、相続を行う際に、何らかの理由があり、遺産分割が完了していない財産のことをいい、相続税においては死亡日の翌日から10ヵ月以内と定められた相続税の申告の期限内においてなお分割が完了していない財産については未分割財産として、法定相続分に応じて取得したものとして暫定的に申告を行います。

未分割財産とは

相続税における未分割財産とは、相続税の申告期限までに分割が行われなかった財産のことです。

遺言がなく相続人の間で争いが起きたり、遺産分割協議での話し合いなどでは結論が出ず、死亡日の翌日から10ヵ月以内の相続税の申告の期限までに分割できなかった場合、その遺産分が未分割財産となります。

未分割財産がある場合、分割が完了するまで、法定の相続人が法定の相続税に応じて取得したとして仮の税負担を行います。

未分割財産の相続税申告

遺産の総額が、3000万円+(600万円 × 法定相続人の数)で計算される通常の「相続税の基礎控除額」を超える可能性がある場合、相続税の申告が必要となり、その時、未分割財産があれば、その分も相続税の対象になります。

基礎控除額を超える場合でも、未成年者控除、障害者控除及び相次相続控除の適用で申告不要になる場合もあります。未分割財産を含めた控除額などの計算の詳細は税理士に相談しましょう。

未分割財産の2つの仮申告方法

未分割財産と分割済みの遺産を合わせた遺産の全体を法定相続分に応じて分割する「穴埋め方式」と未分割財産だけを法定相続分で分割して分割済みの遺産に上乗せする「積み上げ方式」がありますが、実務では原則として「穴埋め方式」とされています。

未分割財産の相続税申告を怠った場合

相続税の申告期限までに未分割財産の申告や未分割財産の納税をしなかった場合は、翌日から「延滞税」と「無申告加算税」が課されます。延滞税は納税が遅れたことに対する課税で、無申告加算税は期日までに申告されなかったことに対する課税となります。

未分割財産のデメリット

未分割財産があると以下の特例を受けることができません。

  1. 配偶者の税額軽減(配偶者控除)
  2. 小規模宅地の特例
  3. 特定計画山林の特例
  4. 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例
  5. 事業承継税制

その他、物納ができなかったり、遺産のお金を納税にあてることができないというデメリットがあります。

また未分割財産の分割が確定後に、修正の申告や更正の請求を行う必要が発生する場合があるので、手続きが複雑になる可能性があります。

未分割財産のデメリット回避手段

未分割財産については、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することで、上記1~3の特例は、条件に当てはまれば、あとから適用されるようになります。

また納税資金が不足する場合は、未分割財産の分割前の預金を引き出すことができる「仮払い制度」を利用することができます。ただし、相続人ごとに引き出せる金額の割合が定められているうえ、同一金融機関からの引き出しは原則として150万円が上限となります。詳しいことは税理士に相談しましょう。

未分割財産の分割後の税額変更

未分割財産として相続税を法定相続分で申告した場合と、実際に遺産分割が確定した結果とでは、各人が取得した財産は異なるため、これらの相続税額についても違いが生じることが原則です。

未分割財産の分割後に税額が増えて追加で納める場合は「修正申告」、未分割財産の分割後に税額が減って還付を受ける場合は「更正の請求」をします。

未分割財産の修正申告や更正の請求が必要ない場合

未分割財産の相続税額の合計に変更がない場合は、相続人間で税負担の調整をし、未分割財産の修正申告や更正の請求は必要ない場合があります。

詳しい条件は税理士などに相談しましょう。

未分割財産の修正申告や更正の請求が必要な場合

「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、未分割財産の分割後に特例を受け税額が下がった場合、分割が行われた日の翌日から4か月以内に更正の請求を行い、少なくなった分の税額の還付を受けることができます。

未分割財産の分割後に税額が少なくなった相続人が更正の請求をした場合は、税額が多くなった相続人は修正申告をする必要があります。

詳しい内容は税理士に相談しましょう。

未分割財産の分割の再延長

上記の通り、申告期限後3年以内の分割であれば一定の特例の適用が受けられますが、しれを超えてしまうと原則として再延長はできません。しかし、未分割財産についての訴訟が起こされている場合などには、延長が認められる場合があります。

未分割財産の分割の再延長の申請

上記のような理由で、相続税の申告期限の翌日から3年以内に遺産が分割できない場合には、3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出します。

その申請が税務署長の承認を受けた場合には、判決確定の日など条件の日の翌日から4か月以内に未分割財産が分割されれば、特例が適用されます。適用には、未分割財産分割が行われた日の翌日から4か月以内に更正の請求を行う必要があります。

未分割財産のよもやま話・豆知識

未分割の遺産から得られる不動産所得

未分割財産から生じる不動産所得、家賃などはどのように申告するのでしょうか。

アパートなどの賃貸物件が未分割の場合は、遺産分割が確定するまでは、相続財産は相続人全員の共有となり、未分割の賃貸物件から得られる不動産所得は、相続人全員が法定相続分で分け合うことになります。

特定の相続人が管理をしていても、不動産所得に関する所得税は相続人の全員が申告します。

後日未分割財産の分割が行われ、賃貸物件の相続が確定し、法定相続分とは異なる割合となったとしても、不動産所得の申告を遡っての修正はできません。

未分割財産の仮払制度

未分割財産の仮払い制度は、葬儀費用や生前の入院費を遺産分割協議が調う前でも、故人の口座から相続人が一定の金額まで引き出せる制度です。

計算法や条件は、引き出す上限 = 相続開始時の預金残高 × 1/3 × 相続人の法定相続分の割合と150万円のいずれか少ない金額となります。

未払い遺産の相続人ごとの上限金額となり、他の相続人の同意を得ずに手続きができます。

複数の預金機関がある場合は各々の計算の合算になりますが、詳しい計算は税理士に相談しましょう。

遺言がある場合は適応不可などの例外もあります。

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