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期首簿価

2023-01-122023-01-12

一言でいうと?

期首簿価(きしゅぼか)とは、定められた会計期間のはじめに会計書類に記載された、資産や負債の評価額などの簿価を意味し、期首簿価は、会計処理には必ずと言ってよいほど必要な、減価償却の計算に必須の数字となります。

期首簿価とは

期首簿価の「期首」とは、1月1日から12月31日までなど、定められた会計期間(1年)の最初の日のことで、また「簿価」とは「帳簿価額」の略称で、会計書類に記載された資産や負債の額のことをいい、帳簿における残高の金額ともなります。

損益計算書、貸借対照表の作成のために定められた会計期間(事業年度)で、「当期」とは、その定めた期間のことで、その前の期間は、「前期」、次の期間は「次期」、そして会計期間の最後の日を「期末」(決算日)と呼びます。

つまり当期の期首簿価は、前期の期末簿価と同額になります。

期首簿価と減価償却

期首簿価は、会計処理には必ず出てくる減価償却費の計算に必要な数字です。

資産の取得の次の年は、取得価額からその年の減価償却費を差し引いた金額が期首簿価となり、翌年以降も、その期首簿価から減価償却費を差し引いた金額がそのまた翌年の期首簿価になり、その度に期首簿価はどんどん減っていきます。

なお、簿価はあくまで帳簿上の価額ですが、市場における価値はその時によって変化しますので、税金の計算については時価で行います。

期首簿価を使った減価償却の計算方法

代表的な減価償却の方法として、「定額法」と「定率法」の2種類が挙げられます。

「定額法」は、毎年一定の金額を期首簿価から引いて、減価償却費として計上する計算方法で、「定率法」は、その未償却残高に対して、原則として毎年一定の割合を期首簿価から引いて減価償却費として計上する計算方法です。

定率法は、2022年現在、200%定率法が採用されていますが、減価償却資産の償却率表で率を知ることができます。

どちらの方法で計算してもよいとされる一部の資産やその他の方法で計算するべきとされる資産を除いて、基本的には資産によって「定額法」、「定率法」のどちらで計算するのかが決められています。

減価償却の「定額法」の計算例

耐用年数5年(定額償却率0.2)の機械を取得し、取得価額として100万円を計上した場合の「定額法」の減価償却費の計算は、100万円 × 0.2 = 20万円となり、毎年20万円を減価償却費として5年間計上していくことになります。

その結果、1年目の残存簿価が100万円 – 20万円 = 80万円となり、これが次期(2年目)の期首簿価となります。

3年目の期首簿価は60万円、4年目の期首簿価は40万円、5年目の期首簿価は20万円となります。

減価償却の「定率法」の計算方法

「定率法」では、償却額の算出に、「定率償却率」、「改定償却率」、「保証率」の3つを使います。

償却額の確定は、まず「定率償却率」と「保証率」で算出した金額の大きい方を選びますが、「保証率」で算出した金額の方が大きくなる場合は、「改定償却率」で計算した額が償却額となります。

保証率で算出した償却保証額とは、減価償却が遅れるのを防ぐための下限の金額です。

償却保証額を下回りそうな年以降は、常に【初めて下回りそうな年の期首簿価】×「改定償却率」で計算するので、常に同額となっていくのがポイントです。

減価償却の「定率法」の計算例

耐用年数5年(定率償却率0.4、改定償却率0.5、保証率0.108)の機械を取得し、期首簿価100万円で計上の場合、償却保証額は100万円 × 0. 108 = 10.8万円です。

減価償却額の1年目は、100万円 × 0.4 = 40万円で償却額 > 保証額なので、償却費は40万円、2年目の期首簿価は60万円です。

2年目の減価償却費は60万円 × 0.4で24万円、3年目は14.4万円ですが、4年目年は、償却額 ≦ 保証額となるので、4年目以降は4年目の期首簿価×改定償却率で計算します。

減価償却の「定額法」「定率法」の仕訳

耐用年数5年(定額償却率0.2)の機械を取得し、期首簿価として100万円を計上した場合の1年目の仕訳は以下の通りです。

定額法の仕訳

借方          貸方

減価償却費 200000円  固定資産(備品) 200000円

定率法の仕訳

借方           貸方

減価償却費 400000円  減価償却累計額 400000円

期首簿価・期末簿価が残存簿価1円となる例

従来、ほとんどの先進国では100%の減価償却を認める中、日本だけが90%の減価償却しか認められず10%の残存価額を残すと定められていることが、企業の設備投資の足かせになり国際競争力を低下させる要因だと言われてきました。

しかし平成19年度の税制改正によって残存価額は廃止され、代わりに「残存簿価」という概念が誕生しました。

また税制改正によって、耐用年数が過ぎた後の有形減価償却資産には、実質的な価値はないとし、残存簿価(備忘価額)として期首簿価・期末簿価に1円だけ残ることになりました。

期首簿価・期末簿価が残存簿価1円となる場合の計算法

先ほどの耐用年数5年の機械を取得し、100万円を計上した場合の計算の場合で、定額法、定率法とも5年目で1円を残す処理の計算です。

「定額法」の場合

5年目は4年目の期首簿価に計上する減価償却費20万円から1円を引いて、減価償却費を199,999円として1円を残します。

「定率法」の場合

5年目は4年目の期首簿価に計上する減価償却費108,000円から1円を引いて、減価償却費を107,999円として1円を残します。

期首簿価・期末簿価の残存簿価が1円となる場合の除却処理と仕訳

期首簿価・期末簿価として残っている残存簿価1円の減価償却資産を除却するタイミングは、実際に廃棄等した場合や、事業で使用しなくなって倉庫で保管したままにしておくといった場合です。

期首簿価・期末簿価として残る残存簿価1円の減価償却資産を「固定資産除却損」として除却するときは、直接法と間接法による仕訳があります。

残存簿価1円の「直接法」による除去の仕訳

直接法による除去の仕訳は、減価償却資産の帳簿価額から直接減価償却額を差し引く方法です。

借方             貸方

固定資産除却損 1円     機械装置 1円

除却時には、借方に固定資産除却損などの費用、貸方に除却したい減価償却資産の勘定科目を置き仕訳を行います。直接法の仕訳は、残存簿価1円をそのまま消去するシンプルな形です。

残存簿価1円の「間接法」による除去の仕訳

間接法による除去の仕訳は、資産科目から直接的に減価償却を行わずに、「減価償却累計額」の科目を利用して、間接的に減価償却を行います。

資産科目には取得価額、減価償却累計額にはこれまでの減価償却費の累計(残存簿価1円の場合は取得価額-1円の残額)が計上され、同時に消去することになります。

借方               貸方

固定資産除却損 1円       機械装置 1,000,000円

減価償却累計額 999,999円

期首簿価のよもやま話・豆知識

期首簿価・期末簿価に残存簿価1円を残さない場合とは

上記、有形減価償却資産の期首簿価・期末簿価に残存簿価1円を残す方法を紹介いたしましたが、ソフトウェアなどの無形固定資産は最終的に残存価格0円とし、1円を残す必要はありません。

会計ソフトで計上する場合などでは、固定資産の内容を選択することで、備忘価格を設定できるようになっています。

無形固定資産には、ソフトウェア ・商標権 ・特許権 ・実用新案権 ・意匠権 ・育成権 ・営業権などがあります。

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