関税
2023-01-122023-01-12
一言でいうと?
関税(かんぜい)とは、税関を通過する貨物に対して課される税をいい、輸出品に課される「輸出関税」、輸入品に課される「輸入関税」、国境を通過するだけの貨物に課される「通過関税」に分けられ、目的別には、国家の財政収入の確保を主な目的とする関税と、自国の産業保護を主な目的とする関税に分けられます。
関税とは
関税とは、日本では一般的に「輸入品に課される税」と定義されており、主に「財政関税」と「保護関税」とに分けられます。
「財政関税」とは、国家の財政収入の確保を主な目的とする関税、また「保護関税」は自国の産業保護を主な目的とする関税で、税率の調整だけではなく、輸入する数を制限するなど、他の政策と組み合わせて施行されることが多い税です。
現在先進国では、税収入の確保を主な目的とする「財政関税」の割合は少なくなり、自国の産業保護を目的とする「保護関税」が主流となっています。
「財政関税」とは
国庫収入を第一目的として課税される関税を財政関税といいます。
その典型的なものに、保護を考慮する必要がない国内でまったく生産されない商品や、ぜいたく品に対する輸入税がその典型としてあげられます。
現在、先進国においては、財政関税はほとんどみられず、保護関税がほぼすべてといえますが、発展途上国においては、まだ関税収入が財政の大きな割合を占めている場合も多くみられます。
「保護関税」とは
保護関税は、国内産業保護のための関税ですが、世界貿易機関(WTO)が、その除去を規定しないのは、保護関税が産業育成や国内政策の主要な手段であるからと考えられます。
保護関税の代表的例は、育成関税と維持関税で、前者は、将来の成長性が期待できるが現在は未熟である国内産業を保護・育成するもので、後者は、すでに国際競争力が失われた産業であるが、失業など大きな社会問題を食い止め社会を安定させるために必要な関税です。
保護関税はこの他に、一時的・長期的保護関税、農業保護関税、工業保護関税などがあります。
関税率の設定と種類
日本は租税法律主義を定めており、関税率は法律に基づく「国定税率」と、国会の承認を受けて成立した条約に基づいて設定される「協定税率(WTO譲許税率)」などがあります。
まためまぐるしく変わる世界情勢に合わせ、迅速に対応する必要があることから、法律で一定の条件を定め、その範囲内で政令により関税率の変更を行う「緊急関税制度」があります。
関税率は国によって異なり、品目や原産国によって分けられ、設定されています。
「国定税率」とは
国定税率は「関税定率法」と「関税暫定措置法」によって定められています。
「関税定率法」には、基本的な税率が定められており、これは事情に変更のない限り長期的に適用されます。
「関税暫定措置法」は、基本的な税率を設定できない事情がある場合に限って、一定期間、基本税率に優先して適用される暫定的な税率が定められており、開発途上国・地域からの輸入品に対して適用される「特恵税率」なども定められています。
「協定税率(WTO譲許税率)」とは
「協定税率(WTO譲許税率)」とは、WTO(世界貿易機関)協定において、加盟国・地域に対して一定率以上の関税を課さないことを約束している税率です。
これは、協定税率が国定税率より低い場合に、加盟国・地域間で適用される税率ですが、ただし、非加盟国でも、自由貿易協定を除く通商航海条約等の二国間条約で最恵国待遇を約束している国に対しては協定税率を適用することができます。
EPA(経済連携協定)も条約に基づく税率のひとつで、活用すれば、国や商品によっては輸出入時の関税が削減されるケースがあります。
関税率を決める国際的な共通ルール
関税率は、輸入する品目によって細かく定められており、それぞれの国が守りたいものの税率が高くされている傾向にありますが、日本では、WTO加盟国との共通ルールに則った関税制度が設けられており、関税率表は、世界税関機構(WCO)のHSに合わせて作られています。(関税率については、財務省のサイトで実行関税率表が公開されています。)
HSとは商品の名称及び分類についての統一システムのことで、そのシステムに関する国際条約をHS条約と言い、これに基づいて定められたコード番号がHSコードと言われています。
関税の支払いと貿易条件
関税の額を決めるのは税関で、関税の支払いは、基本的には「輸入者」が「品物を輸入する国」に対して支払いますが、貿易条件に応じて輸出者が支払うこともあります。
日本では「輸出関税」はありませんが、国によっては、輸出品についても「輸出者」が「輸出元の国」に対して支払うこともあります。
「インコタームズ」という世界共通の貿易条件の国際基準として定められた世界で最も利用されている国際貿易取引条件がありますが、インコタームズでは、売主(輸出者)と買主(輸入者)の間での、様々な規定が定められています。
関税額の具体的な決め方
関税額は、「物品の種類(素材や材質、製造方法)」「輸入元の国・地域」「用途」の3つの要素から、決まっていきます。
例えば、同じ種類の商品でも素材や材質、加工の有無、原産国や地域、用途によって関税率が変わることから、その商品をしっかり調べることが重要です。
また発展途上国など、輸入元によって低い税率が適用されるケースもあります。
関税の基本的な計算方法は「課税対象額 × 関税率」ですが、個人輸入か商用輸入かによっても課税対象額が異なります。
少額輸入貨物の関税と簡易税率
商用輸入の場合は商品代金に加え、保険料や送料など諸経費も課税対象額に含まれますが、個人輸入では、課税対象額は商品代金の60%となります。
一般貨物や郵便小包利用で、課税価格の合計額が20万円以下の場合には、簡易税率が適用されます。
一般の関税率は、数千の品目分類の税率がありますが、簡易税率は7区分の税率で確定します。
簡易税率は、わが国の産業への影響から、適用が適当でないとされる物品には適用されません。
また輸入者が一般の関税率の一括適用を希望した場合は、一般の関税率を適用します。
簡易税率の7区分の税率
品目と関税率
1 酒類
ワイン 70円/リットル
焼酎等の蒸留酒 20円/リットル
清酒、りんご酒等 30円/リットル
2 トマトソース、氷菓、
なめした毛皮、毛皮製品等 20%
3 コーヒー、茶(紅茶を除く)
なめした毛皮等 15%
4 衣類及び衣類附属品
(メリヤス編み又はクロセ編みのものを除く)等 10%
5 プラスチック製品、ガラス製品、
卑金属(銅、アルミニウム等)製品、家具等 3%
6 ゴム、紙、陶磁製品、鉄鋼製品、すず製品 無税
7 その他 5%
簡易税率適用の場合の消費税
簡易税率品でも、別途、内国消費税(消費税、酒税など)、地方消費税が課税され、また、無税のものも、内国消費税及び地方消費税が課税されます。
課税価格が1万円以下の場合、原則、関税、消費税及び地方消費税は免除されますが、酒税及びたばこ税・たばこ特別消費税はかかります。
革製バッグ、パンスト・タイツ、手袋・履物、スキー靴、ニット製衣類等は、居住者への個人使用のギフトを除き、課税価格が1万円以下でも関税等がかかります。
郵便物の重量制限で複数に分割されている場合は、合計が課税価格となります。
関税のメリット・デメリット
外国からの輸入商品に関税が課せられると、その分だけコストが増加し、国産品に対して競争力が低下することから、関税の国内産業保護というメリットが生まれます。
しかし、関税をかけすぎると貿易が停滞してしまったり、国民が安く物を買えるという権利が侵害されたり、外国との障壁や不満が高まるというデメリットもあるため、貿易収支などを考えながらバランスを取ることが重要です。
関税のよもやま話・豆知識
少額輸入貨物に対する簡易税率の適用除外例
以下のものについては、一般税率が適用され「少額輸入貨物に対する簡易税率」は適用されないことになっていますので注意が必要です。
米などの穀物とその調製品
ミルク、クリームなどとその調整品
ハムや牛肉缶詰などの食肉調製品
たばこ、精製塩
旅行用具、ハンドバッグなどの革製品
ニット製衣類
履物
身辺用模造細貨類(卑金属製のものを除く)