医療費控除
2023-06-082023-06-08
一言でいうと?
医療費控除(いりょうひこうじょ)とは、1年間に自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費や医薬品費を支払った場合において、控除が受けられる制度で、医療費控除は、支払った医療費や医薬品費が一定額を超えるときに、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができます。
医療費控除とは
医療費控除とは、申告する本人と、その年の1月1日から12月31日までの間に生計を一にする家族が、支払った医療費や医薬品が一定金額を超えた場合、控除が受けられる制度です。
医療費控除には、(1)通常の医療費控除、(2)セルフメディケーション税制(平成29年1月1日~令和8年12月31日までの特例)の2種類があり併用は不可となります。
会社員の場合、医療費控除の手続きは年末調整では行われませんので、税金の還付を受けるには確定申告を行う必要があります。
医療費控除の還付申告は、対象の年から5年以内です。
医療費控除を受けられる要件
医療費控除の対象者は、自分自身と、生計を一にする配偶者や親族ですが、別居をしている家族も生活費の仕送りをしている場合などは、医療費控除の対象になります。
また治療費だけでなく、付き添い人分も含んだ電車やバスなどの公共交通機関の通院交通費や医療費控除の対象となる薬代も含まれますが、マイカーのガソリン代や駐車場代は医療費控除の対象外です。
通常の医療費控除の対象例
医療費控除の対象に含まれるものの例は、以下のようなものです。
・通院費、医師等の送迎費
・入院の部屋代や食事代
・医療用器具の購入や賃借費用
・義手、義足、松葉づえ、義歯や補聴器等の購入費用
・身体障害者福祉法などの規定により、都道府県や市町村に納付する費用のうち、医師等の診療費用等に当たるもの
・6か月以上寝たきりの人のおむつ代(医師によるおむつ使用証明書が必要)
・介護保険等制度で提供される一定の施設・居宅サービスの対価
・緊急搬送のための費用
・特に依頼した療養上の世話の対価
通常の医療費控除の対象外例
医療費控除の対象に含まれないものの例は、以下のようなものです。
・容姿を美化し、容ぼうを変えるなどの目的で行った整形手術の費用
・健康診断の費用
・タクシー代(電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除きます。)
・自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車料金
・治療を受けるために直接必要としない、近視、遠視のための眼鏡、補聴器等の購入費用
・親族に支払う療養上の世話や人的役務の提供の対価
・予防接種やサプリメント等の費用
通常の医療費控除の対象の交通費
医療費控除には、バスや電車などの公共交通機関の交通費も含めることができますが、領収書が発行されないものも多くあります。
交通費は領収書がなくても控除の対象となりますので、領収書がない場合は、いつ、どこの病院に行ったのか、どの公共交通機関を利用し、いくら支払ったのかなどを記録して、確定申告時に提出する明細書に、通院のための交通費として合計金額を記載しましょう。
通常の医療費控除の金額と計算法
医療費控除の対象となる医療費の合計金額は、10万円より上となることが条件ですが、総所得金額等が200万円未満である場合には、1年間に支払った医療費が10万円より少なくても、総所得金額の5%について医療費控除の適用を受けることが可能です。
医療費の合計10万円(総所得金額等が200万円未満である場合には、総所得金額の5%)を超えた金額が、医療費控除として扱われ、最高金額(上限)は200万円となります。
通常の医療費控除の計算式
医療費控除の金額は、次の式で計算した金額で、最高で200万円となります。
(実際に支払った医療費の合計額) - (保険金などで補てんされる金額) - 10万円
その年の総所得金額等が200万円未満の人は、次の式での計算となります。
(実際に支払った医療費の合計額) - (保険金などで補てんされる金額) - (総所得金額等の5%の金額)
通常の医療費控除の計算の「保険金などで補てんされる金額」とは
通常の医療費控除の計算の「保険金などで補てんされる金額」とは以下のようなものです。
・生命保険契約や損害保険契約に基づく医療保険金や入院費給付金、傷害費用保険金など
・健康保険法の規定により支給を受ける療養費や出産育児一時金、家族出産育児一時金、家族療養費、高額療養費、高額介護合算療養費など
・医療費の補てんを目的として支払を受ける損害賠償金
・任意の互助組織から医療費の補てんを目的として支払を受ける給付金
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
予防接種など法令に基づく健康の保持増進及び疾病の予防への取組を行っており、自分自身と自分と生計を一にする配偶者その他の親族のための1.2万円を超える特定一般用医薬品等購入費(上限8.8万円)がある場合に、確定申告を行うことで税金が還付されることをセルフメディケーション税制と言います(令和8年末日までの特例)。
セルフメディケーション税制は、通常の医療費控除との併用が不可となり、通常の医療費控除の適用を選択した上で、支払った特定一般用医薬品等の購入費は、通常の医療費控除の対象に含まれます。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の適用要件
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の適用要件は、申告人がその年分に、「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」を行っている必要があり一定の取組とは、以下の取組をいいます。
・保険者が実施する健康診査(人間ドック、各種検診)
・市区町村の健康増進事業の健康診査
・定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種
・勤務先で実施する定期健康診断
・特定健康診査(メタボ検診)、特定保健指導
・市区町村の健康増進事業のがん検診
なお生計を共にする配偶者・親族ついては必須ではありません。
セルフメディケーション税制に係る医療費控除額の計算法
セルフメディケーション税制に係る医療費控除額の計算式は以下のようになります。
(その年中に支払った特定一般用医薬品等購入費) - (保険金などで補てんされる金額) - 1.2万円
セルフメディケーション税制に係る医療費控除により軽減される税額は、その方に適用される税率により異なります。
また人間ドックの受診費用などの一定の取組に要した費用は、控除の対象になりません。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の医薬品
セルフメディケーション税制の対象となる特定一般用医薬品とは、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)、薬局やドラッグストア等で購入できる医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)及び令和4年以降に購入された医薬品でスイッチOTC医薬品と同種の効能又は効果を有する一定の医薬品とされています。
対象となる医薬品(スイッチOTC薬等)は、購入した際の領収書にセルフメディケーション税制の対象であることが表示されていますが、具体的な品目一覧は、厚生労働省ホームページをご覧ください。
医療費控除となるOTC医薬品とは
主に医師が処方する医薬品を医療用医薬品といい、薬局・薬店・ドラッグストアなどで処方せん無しに購入できる医薬品をOTC医薬品といいます。
長らく通称「大衆薬」「市販薬」と呼ばれてきましたが、医薬品協会では、2007年より「OTC医薬品」に呼称を変更・統一しました。
医師から処方される医療用医薬品のうち、副作用が少なく安全性の高いものをOTC医薬品に転用(スイッチ)したものを「スイッチOTC医薬品」といいます。
語源は、英語の「オーバー・ザ・カウンター」(カウンター越しの販売)の略です。
医療費控除の確定申告
サラリーマンやパート・アルバイトなどの給与所得者の場合、医療費控除の適用を受けるためには確定申告をする必要がありますが、「還付申告」の場合は、医療費のかかった年の翌年1月1日から5年以内であれば申請が可能です。
通常の医療費控除の確定申告の必要書類と手順
通常の医療費控除の確定申告は、税務署の窓口や国税庁のホームページから「確定申告書」や「医療費控除の明細書」を入手し作成して提出します。
領収書類は提出の必要はありませんが、「医療費控除の明細書」の記載確認に必要となります。
「医療費控除の明細書」の簡略化に電子データや加入している健康保険組合から送られてくる「医療費通知」を添付することもできます。
他に勤務先の源泉徴収書も必要となります。
通常の医療費控除での領収書の保管義務
確定申告時に「医療費控除の明細書」を添付する場合、2017年以降、領収書の添付は不要になりましたが、確定申告期限等から5年間は、税務署長から医療費の領収書の提示を求められた時に、この領収書を提示又は提出する義務があります。
通常の医療費控除の確定申告のマイナポータル連携
通常の医療費控除の確定申告の際、令和3年9月以降診療分の医療費通知情報を、マイナポータル連携により一括取得し、申告書に自動入力することもできるようになりました。
マイナカードと保険証を連携させることにより、保険証を提示して医療を受けた場合の情報が領収書なしでも自動入力されます。
セルフメディケーション制度の医療費控除のための必要書類
セルフメディケーション税制による医療費控除の特例の適用を受ける場合には、「確定申告書」「セルフメディケーション税制の明細書」会社員の場合「源泉徴収書」が必要です。
医療費控除の申請で、これまで添付が必要だった、健康診断などの取り組みを証明する領収書・書類は、2022年(令和4年)の確定申告から不要となりました。
ただし、取組関係書類は、領収書とともに5年間保存する必要があります。
医療費控除のよもやま話・豆知識
健康診断の医療費控除について
上記の医療費控除の対象外例のように、人間ドックなどの健康診断や特定健康診査の費用は医療費控除の対象とはなりません。
しかし健康診断の結果、重大な疾病が発見された場合で、引き続き治療を受けたとき、又は特定健康診査を行った医師の指示に基づき一定の特定保健指導を受けたときには、健康診断や特定健康診査の費用は医療費控除の対象となります。
健康診断等を受診した際の領収書や診断結果は、然るべき時のため保存しておきましょう。