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表面税率

2023-02-142023-02-14

一言でいうと?

表面税率(ひょうめんぜいりつ)とは、法人所得に対して課税される法人税や住民税、事業税などを合わせた税金の税率で、税法や条例で規定されている税率のことをいいますが、その中で、事業税は会計処理上、損金への算入が可能であることから、表面税率は、会社が実質的に負担する税割合ではなく、納付や申告の際に用いられる税負担率となります。

表面税率とは

表面税率とは、法人税・住民税・事業税を合わせた額から算出され、法人所得に対して課税される税金です。

ただし、その中で事業税は翌年の損金にできるため、表面税率は、会社が実質的に負担する税割合とは異なり、法人税の申告や納税額の計算の場合に使用する税率となります。

これに対し、翌年に計上できる損金を考慮にいれた税金の実質負担額を実効税率(法人実効税率)といい、会計処理ではこの2つの税額を使い分ける必要があります。

表面税率と実効税率の違い

決算の着地見込みにもとづいて 納税額を予測する場合には「表面税率」を活用し、所得の圧縮等の節税効果を予測する場合には「実効税率」を利用することになります。

事業税は、支払った事業年度(翌期)の損金にされますので、当期の所得に対して最終的な税負担額を算出するには、翌期の事業税損金算入効果を考慮する必要があり、この考え方が、「実効税率」で、これが「表面税率」との相違点です。

表面税率の対象となる5つの税

表面税率は、所得に応じて負担する税金が対象で、「法人税」「地方法人税」「法人住民税(法人税割)」「法人事業税(所得割)」「特別法人事業税」の5つとなります。

商品の販売やサービスなどの取引に課税される「消費税」、企業が所有する不動産や償却資産に課税される「固定資産税」などは含まれません。

以下では標準税率を基本とし、税率は令和5年1月1日現在のものとしますが、改正により変動することがあります。

また一部の都道府県においては「超過税率」を適用するところもあります。

表面税率の対象となる法人税

表面税率の対象となる法人税は、法人の所得に応じて課税される国税で、直接税となり、法人税は赤字企業においては免除されています。

法人税率は、所得に応じて軽減措置が講じられているため、会社の資本金・総所得などによって変化し、税率は以下の表のとおりとなります。

資本金所得税率
1億円以下23.2%
1億円以上800万円以下15%
1億円以上800万円以上23.2%

表面税率の対象となる地方法人税

令和元年(2019年)10月1日以前の税率は4.4%でしたが、税制改正によって引き上げられ令和元年(2019年)10月1日以後に開始する事業年度の地方法人税率は10.3%です。

表面税率の対象となる法人住民税

法人住民税は、所得にかかわらず必ず一定額を支払わなければならない均等割と、法人税額を基に税額が決定される法人税割がありますが、表面税率の計算においては、後者の法人税割だけが対象となります。

表面税率の対象となる住民税は、均等割を除く法人市町村民税の1.0%(標準税率)と等割を除く法人市町村民税の6.0%(標準税率)の2つの合計となります。

なお、一定の場合には超過税率が適用される自治体もあります。

表面税率の対象となる法人事業税

表面税率の対象の法人事業税とは、都道府県が課す税で、法人住民税が地域社会の構成員としての税なのに対して、法人事業税は法人が行う事業に課されます。

法人事業税は、資本金1億円以下の法人は、所得400万円以下は3.5%、400万円超800万円以下は5.3%、800万円超は7%となり、資本金1億円超の法人(外形標準課税適用法人)は、付加価値割、資本割、所得割の3つが課されます。

法人税同様、法人事業税も赤字企業は免除され、東京、大阪など一部の都道府県では、住民税同様「超過税率」を適用しています。

表面税率の対象となる特別法人事業税

表面税率の対象となる特別法人事業税は、地域間の税源の偏在是正のために、2019年度税制改正で、地方法人特別税の廃止の代わりに新創設されました。

事業税の納付義務のある法人が課税対象で、2019年10月1日以後に開始する事業年度から適用されています。

特別法人事業税額は、基準法人所得割額(標準税率により計算した事業税の所得割額)等に一定の税率をかけて計算しますが、税率は法人の種類により異なり、資本金1億円以下の普通法人は37%、資本金1億円超の普通法人(外形標準課税適用法人)は260%です。

表面税率の計算方法

表面税率の計算式は、以下のとおりとなります。

法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率) +法人事業税率+特別法人事業税率

また上記計算式の括弧をはずすと以下のようになります。

表面税率=法人税率

+法人税率 × 地方法人税率

+法人税率 × 法人住民税率

+法人事業税率

+法人事業税率 × 特別法人事業税率

表面税率の計算例

資本金が1億円以下の所得800万円以上の法人を想定して、標準税率で計算すると以下のようになります。

23.2% + (23.2% × 10.3%) + (23.2% × 1.0%) + (23.2% × 6.0%) + 7.0% + (7.0% × 37%) ≒ 表面税率36.8%

表面税率と実効税率の計算の比較

実効税率(法定実効税率)の計算式は、表面税率 ÷ (1 + 事業税率 + 特別法人事業税率)となり、上記法人例にあてはめると、3.68 ÷ (1 + 0.7 + 3.7) ≒ 2.56で、実効税率は25.6%となります。

表面税率36.8% - 実効税率25.6% = 11.2%で、これが、法人事業税を損金算入した結果の税金の軽減分となります。

特に会社の規模が大きくなる程、当然ながらこの表面税率と法定実効税率の幅がもたらす影響も広がります。

表面税率のよもやま話・豆知識

日本の表面税率の変遷

表面税率の計算の元でもある日本の法人税率は、平成の30年間で7回の減税が行われ40%から23.2%まで低下しました。

下げ幅は16.8%で、特にアベノミクス以降加速し、その結果、表面税率、実効税率も下がり続けています。

しかしやっと実効税率が20%台になった段階で、欧米の諸外国と比べてもまだ表面税率、実効税率が高い状態は続いています。

政府は、税負担を全体で分かち合う構造へとシフトし税収を拡大しながら、企業誘致の力となる表面税率、実効税率の引き下げを進める方針で法人税改革を進めています。

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