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エンジェル税制

2023-03-162023-03-16

一言でいうと?

エンジェル税制(えんじぇるぜいせい)とは、ベンチャー企業に対する投資の促進を図る観点から、特定中小会社および特定新規中小会社への投資を行った個人投資家に与えられる税制上の特例措置のことで、エンジェル税制を利用した場合、個人投資家は、所得税や住民税の優遇措置を受けることができます。

エンジェル税制とは

エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するために、エンジェル税制の対象企業に投資を行った個人投資家に対して、税制上の優遇措置を行う制度で、個人投資家は、投資した年に所得税の優遇措置を、また株式を売却して損失が発生した場合には、所得税および住民税の優遇措置を受けることができます。

メリットは、企業にとって資金調達になることと、投資家にとってクラウドファンディングよりも受ける利益が大きい場合があることですが、手続きが煩雑で申請の際、書類不備などが生じることが多いのがデメリットとなります。

エンジェル税制の利用要件

エンジェル税制を利用し、優遇措置を受けるためには、基準日において企業要件と個人投資家要件をすべて満たす必要があります。

エンジェル税制の対象企業の要件

エンジェル税制対象の投資先の対象企業は、以下の要件に当てはまる必要があります。

・特定の株主ないし特定の株主グループの保有する株式数の割合(持株割合)が5/6を超えないこと

・大規模法人ないし大規模法人グループの所有に属さないこと

・未上場・未登録の株式会社で、風俗営業等に該当しないこと

・中小企業であること

・企業の設立経過年数に応じた要件をみたすこと

エンジェル税制対象の中小企業とは

エンジェル税制対象の中小企業とは、以下のような指定があります。

業種資本金と従業員数
製造業、建築業、運輸業、その他3億円以下又は従業員300人以下
卸売業1億円以下又は従業員100人以下
サービス業5千万円以下又は従業員100人以下
小売業5千万円以下又は従業員50人以下
ゴム製品製造業3億円以下又は従業員900人以下
ソフトウエア業、情報処理サービス業3億円以下又は従業員300人以下
旅館業5千万円以下又は従業員200人以下

エンジェル税制で投資する個人投資家の要件

エンジェル税制で投資する個人投資家には、以下の要件に当てはまる必要があります。

・金銭の払込みにより、対象企業が新規に発行した株式を取得していること

・同族会社判定の基礎となる株主ないし株主グループに属さないこと

エンジェル税制で個人投資家が受けられる優遇措置

エンジェル税制を利用する個人投資家は、下記の2つのタイミングで優遇措置を受けることができます。

タイミング1 株式取得時点の所得税の優遇措置

タイミング2 株式売却時点の所得税および住民税の優遇措置

エンジェル税制で株式取得時点に受けられる優遇措置

非上場のベンチャー企業へ投資した年に受けられるエンジェル税制の株式取得時点に受けられる所得税の優遇措置には、「優遇措置A」と「優遇措置B」があります。

エンジェル税制で株式取得時点に受けられる優遇措置A

エンジェル税制で株式取得時点に受けられる優遇措置Aは、設立5年未満の企業への投資が対象となり、【対象企業への投資額 ‐ 2000円】をその年の租税特別措置法上の総所得金額から控除できます。(株式等の譲渡所得等を除きます。)

控除対象となる投資額の上限は、(株式等の譲渡所得を含む当該適用年分の総所得金額と退職所得金額及び山林所得金額の合計額) × 40%と800万円のいずれか低い方となります。

エンジェル税制で株式取得時点に受けられる優遇措置B

エンジェル税制で株式取得時点に受けられる優遇措置Bは、設立10年未満の企業への投資が対象となり、対象企業への投資額全額をその年の他の株式等譲渡益から控除でき、控除対象となる投資額の上限はありません。

株式等を譲渡したときの申告分離課税のうち所得税の税率15%分が対象となり住民税の5%は対象外となります。

エンジェル税制で株式売却時点に受けられる優遇措置

エンジェル税制で株式売却時点に受けられる優遇措置としては、対象企業の株式を売却して損失が生じた場合に、所得税および住民税の優遇措置を受けることができます。

対象企業の株式の売却等により生じた損失を、その年の他の株式譲渡益と通算(相殺)できるだけでなく、その年に通算(相殺)しきれなかった損失については、翌年以降3年にわたって、順次株式譲渡益と通算(相殺)することができます。

エンジェル税制の申請と投資の流れ

エンジェル税制の申請は、対象企業本社の都道府県に対して行い、基準日において要件を満たしている場合、都道府県が対象企業に対し確認書を交付します。

エンジェル税制の対象企業は、都道府県から交付された確認書及び付属書類(株式移動状況明細書と個人が一定の株主に該当しないことを確認した書類)を個人投資家に交付します。

個人投資家は、確認書・投資契約書の写し・上記2つの付属書類を添付して確定申告を行います。

※直接投資ではなく認定投資事業有限責任組合経由での投資の場合、都道府県への確認申請は不要です。

エンジェル税制の対象企業側が行う手続き

エンジェル税制の対象企業側が行う資金調達の手続きは以下の通りです。

※カッコ内は必要書類です

(1)株式発行を決議(株主総会議事録等)

(2)個人投資家から株式の申込みを受ける(株式申込証)

(3)株式の割り当て

(4)投資契約の締結(投資契約書)

(5)払込期間内または払込期日までに投資家から払込取扱金融機関に払込を受ける(払込があったことを証する書面)

(6)登記(履歴事項全部証明書)

エンジェル税制の個人投資家側が行う手続き

エンジェル税制の対象企業側が行う手続き資金調達の手続きは以下の通りです。

(1)株式の申込みを行う(株式申込証)

(2)投資契約の締結(投資契約書)

(3)払込期日までに払込取扱金融機関に払込みを行う

※第三者割当増資を申込割当方式による場合は、株式申込書の対象企業への提出が必要で、総数引受方式による場合は、募集株式総数引受契約書を対象企業と締結します。

(4)確定申告の手続き

確認書・株式移動状況明細書・個人が一定の株主に該当しないことを確認した書類・投資契約書の写し等の必要書類を添付します。

エンジェル税制の事前確認制度について

エンジェル税制の事前確認制度とは、資金調達前にベンチャー企業がエンジェル税制の対象か否かについて確認を受けることができる制度で、この確認を得ることで、投資家からの投資促進が期待できます。

エンジェル税制の事前確認制度の利用・不利用の各流れ

(エンジェル税制の事前確認制度を利用しない場合)

投資を受けた後に、基準日(通常、払込期日)において企業要件、個人投資家要件をみたす旨の確認申請を行います。

(エンジェル税制の事前確認制度を利用する場合)

投資を受ける前に、基準日(確認申請日)において企業要件をみたす旨の事前確認申請を行い、事前確認の有効期限内に投資を受けた後に、基準日(払込期日)において企業要件および個人投資家要件をみたす旨の確認申請を行います。

エンジェル税制のよもやま話・豆知識

エンジェル税制の所得税の優遇措置の比較具体例

投資家の総所得額:1億2千万円

投資額 : 300万円

他の株式譲渡益 : 300万円

ーーーーー

優遇措置A

控除金額 : 299.8万円

エンジェル税制を利用した場合の支払税額:188.466万円

エンジェル税制を利用しない場合の支払税額:287.4万円

差額:98.934万円

ーーーーー

優遇措置B

控除金額 : 300万円

エンジェル税制を利用した場合の支払税額:242.4万円

エンジェル税制を利用しない場合の支払税額:287.4万円

差額:45万円

※この場合は優遇措置Aの選択が有利です。

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