税務調査の種類について知ろう
2023-07-072023-07-07
一言でいうと?
税務調査の種類とは、大きく分けて調査の強制力の有無による「任意調査」と「強制調査」の2つの種別がありますが、その他にも、「事前予告の有無による種別」、「調査期間等に基づく種別」、「調査場所等に基づく種別」、「調査機関による種別」、「法的根拠による種別」などさまざまな分類方法による種類があり、また税務調査の目的の種類としては、「課税処分のための調査」、「滞納処分のための調査」、「犯則事件のための調査」の3つがあります。
目次
税務調査の種類とは?個人と法人の違い
税務調査の種類には、大別として「任意調査」と「強制調査」があり、また法的根拠による種別は「法人課税部門」「個人課税部門」「資産課税部門」があります。
この内「強制捜査」は金額の大きさにより法人の実調率が高くなります。
更に細かい分類では税務調査には「準備(内部)調査」と「実地調査」があり、「準備(内部)調査」には「机上調査」「外観調査」「書面調査」「呼出調査」が、また「実地調査」関連には「現況調査」「反面調査」「特別調査」「特殊調査」があります。
事前予告の有無の種別では「予告調查」「無予告調査」、調査機関の種別の「国税局」「税務署」、調査期間別では「一般調査」「簡易調查」があります。
税務調査の「目的別分類」の種類
税務調査の目的に基づく分類では、大きく分けて3つの種類があります。
「課税処分のための調査」…税務調査の代表格で、更生や決定などの課税処分をする為の資料情報を収集することを目的とした調査で、税務職員には「質問検査権」という権限が付与されており、申告内容を点検できる仕組みとなっています。
「滞納処分のための調査」…納税を滞納している者に対して、納税の能力がどの程度あるかを量る、最終的には財産を差し押さえるための重要な調査です。
「犯則事件のための調査」…質問・検査は任意検査ですが、臨検・捜索は裁判官の許可を得ているため強制調査になり、実質的には刑事手続きと同じように進められる調査です。
税務調査の「法的根拠別」の種類
税務調査の法的根拠による種類は「法人課税部門」「個人課税部門」「資産課税部門」があります。
「法人課税部門」では、法人税・消費税・源泉所得税・印紙税など、「個人課税部門」では、所得税・消費税、「資産課税部門」では相続税、贈与税、譲渡所得税などの各税目が法的根拠となる調査範囲となります。
また法人に特化した調査では、銀行、証券会社、 保険会社等の法人に対する「金融機関調査」もあります。
税務調査の「強制力の有無による種別」
税務調査の強制力の有無による種別には「強制調査」と「任意調査」がありますが、税務調査の8割ほどが任意調査だといわれています。
税務調査の強制力の有無による種別の「強制調査」
税務調査の「強制調査」は、国税局査察部(マルサ)によって強制的に行われる、税犯則取締法に基づく租税犯則事件の調査と告発(査察)で、裁判官の令状による臨検で差し押さえなどもでき、調査担当官は収税官吏です。
脱税額が1億円を超え、なおかつ悪質な仮装隠蔽工作がなされたと想定される事案に集中しますので、申告金額の大きい法人の調査の確率の方が高くなります。
税務調査の強制力の有無による種別の「任意調査」
税務調査の「任意調査」は納税者の同意を得て帳簿書類等を検査する調査で、確認のための調査と言う意味合いがありますが、質問検査権の行使による間接強制調查となりますので、拒否や嘘やごまかしは認められません。
「任意調査」の法的根拠は、所得税法、法人税法、相続税法、消費税法等で、 調査担当官は国税調査官等です。
税務調査の種類の「準備(内部)調査」とは
税務調査のうち、主に税務署内で行われる「準備(内部)調査」には以下のようなものがあります。
「机上調査」…申告書等を税務署内で調査する
「外観調査」…対象とするか否かについて取引先や来客数、不動産の状態などを外観から調査する
「書面調査」…対象者に疑問点について文書で問い合わせをする
「呼出調査」…対象者を呼出して説明を求める
税務調査の種類の「実地調査」とは
税務調査の種類の「実地調査」とは、実際に調査先に出向いて帳簿書類その他の物件を検査することで、帳簿調査が中心となります。
「実地調査」の主なものは「一般調査」で、帳簿を中心に申告内容の適正さが調査される最も多く行われている調査です。
「実地調査」では、提出された申告書の内容が税法の規定通りに処理されているかどうかを最終的にチェックし、査官が必要と判断した際には、倉庫や工場店舗などのほかパソコンのデータ内容などの現場確認調査も行われます。
調査の日程等は、事前に連絡があり、税務署・納税者・顧問税理士で調整することになります。
税務調査の「実地調査」の「一般調査」以外の調査
税務調査の種類の「実地調査」の「一般調査」以外の調査には以下のようなものがあります。
「現況調査」…対象者の現況を知るために抜き打ちで行われる調査
「反面調査」…対象者の取引先や取引銀行に対して取引の実態調査
「特別調査」…脱税など不正が行われている可能性があるが、一般調査だけでは確定できない場合に、厳しく行われる調査で、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施するもので、調査担当部署の他に特別国税調査官が対応します。
「特殊調査」…一般調査だけでは不十分な場合に、グループ企業を含めて総合的に行われる調査
税務調査の種類の「事前予告の有無による分類 」
税務調査の種類の「事前予告の有無による分類」では、税務調査の多くは、「予告調査」となり、調査に対する準備や日程調整が可能となります。
ただし、違法または不当な行為を安易にし、正確な課税標準または税額等の把握が阻害され困難に直面するおそれや、その他国税に関する調査の適正な遂行に支障をきたすおそれがあると認められる場合には「無予告調査」となります。
税務調査の種類の「調査期間等に基づく分類」
税務調査の種類の「調査期間等に基づく分類」では、「一般調査」以外に「簡易調査」があり「簡易調査」には「着眼調査」「簡易な接触」の2つがあります。
「着眼調査」とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して半日程度で行う調査で、特別調査や一般調査ほど深くはありませんが、軽いと考えるのは早計です。
令和4年の報告では、実地検査では、特別調査・一般調査が2万4千件、着眼調査が7千件行われました。
「簡易な接触」は、納税者宅等に臨場することなく、文書・電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するもので年間件数は近年50万件前後です。
税務調査の種類の「調査場所等に基づく分類」
税務調査の種類の調査場所等に基づく分類という観点で種類分けをすると、税務署内で行う「内部調査」実地場所の調査となる「臨場調査」、実地場所以外を調査する「反面調査」の3つに分かれます。
「内部調査」…机上調査・内観及び外観調査
「臨場調査」…事務所・工場・倉庫等に税務調査官が実際に足を運ぶこと
「反面調査」…納税者への直接の調査ではなく、得意先や仕入れ先に対する調査 、また情報の裏づけのための調査、税務調査の補完の調査
個人に関する税務調査の種類とその特徴
個人事業主の場合は、税務調査の対象になるのが、所得税・消費税ですが、2年前の売上が1千万以内であれば、基本的に所得税のみが対象となります。
個人の場合は、その取引額・課税額のスケールから「強制調査」が行われることは少なく、「任意調査」が主流となります。
資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人は「着眼調査」の対象になり易く、更に多額な脱漏が見込まれる個人は「特別調査」の対象となります。
個人事業主を開業して3年以上経過している、売上高が1千万円前後である、売上に不審な動きが見られる、経費に不審な点がある、そもそも税務申告を行っていないなどの場合は特に注意しましょう。
法人に関する税務調査の種類とそのポイント
税務調査が入りやすい法人は以下の3種類となります。
継続管理法人…過去の税務調査で不正が指摘された法人や不正が多い業種
循環接触法人…不審な点が多い法人や不正への加担が疑われる法人
周期対象除外法人…申告や納税に問題はないが、経営者が変わったり事業規模に変化があった法人
このほか、海外取引を行う法人、消費税還付申告を行った法人、無申告法人、経費計上が常識より多い場合、多額の設備投資や売上に大きな変動があった場合も対象となりやすくなります。
法人の場合、一般調査だけでは不十分な場合に、グループ企業を含めて総合的に行われる調査の「特殊調査」の対象となります。
所得税調査と法人税調査の違いと注意すべきポイント
「所得税調査」とは、個人に行われる調査で、「法人税調査」とは法人に行われる調査です。
税務調査の実地調査の法人税額、所得税額を比べると、法人の方が税務調査を受ける確率は高いと言えるでしょう。
ただし納税者の会社や自宅等の臨場ではなく、文書・電話による連絡や来署依頼によって面接を行い申告内容等の見直しをする「簡易な接触」の調査は、「所得税調査」の方が圧倒的に多くなっています。
「所得税調査」では、家事関連費における必要経費算入の証明や青色申告の控除適用の根拠の証明等がポイントとなり、また「法人税調査」では、役員報酬額や代表者等からの借入金の妥当性などの証明が注意すべきポイントとなります。
リスク対策としての異なる税務調査の対応策
リスク対策としての異なる税務調査の対応策としては、まず「任意調査」に対しては、日頃から、顧問税理士に税務調査の対応策を相談しておくことが最適な準備となり、その場合、正しい帳簿や記録のつけ方等、税務調査をスムーズに乗り越えられる方法を予め知ることができます。
もちろん、税務調査の事前予告が来てから専門税理士に相談することもでき、資料の整理法の伝授、調査のリハーサルや、税務調査の税理士の立ち合いが可能です。
既に申告ミスがわかっている場合も、税理士に相談することにより、「実地調査」「特別調査」「特殊調査」などの深い調査にも対応することができ、追徴課税を低く抑えることができる場合があります。
個人事業主が知っておくべき税務調査の種類と対策
個人事業主の税務調査では所得税についての対策が主に必要となり、所得税の税務調査では、全ての収入や経費がまちがいなく計上されているかということが問題になります。
通帳に入金されている金額や費用については支払った金額を確認し、漏れていないか金額が妥当かの確認が行われ、もととなった領収書・契約書の確認もされます。
個人事業主が知っておくべき税務調査には業種によりさまざまなケースがあり、考えるべき対策もさまざまです。
個人事業主の税務調査で対策すべき具体例
個人事業の接待交際費の領収書について問題が起きる場合が多くありますので、接待した人の所属、氏名等を領収書にメモしておきましょう。
青色申告者の場合、青色専従者の給与が必要経費として認められていますが、この専従者給与の金額の妥当性を説明できるようにしておく必要があります。
また小売業・飲食店業の方の場合で、店の商品を自分で食べたり使用したりすることを自家消費といいますが、この消費に対する計上金額の見積の根拠を作っておきましょう。
個人事業主の税務調査で修正申告になりやすい具体例
例えばアパート経営の場合の敷金の精算には入念なチェックが行われますが、退去者が敷金から負担した修繕費を家主側で費用としている場合には修正申告の対象になります。
また減価償却の方法については、個人は定額法と決められており、これ以外の方法を採用する場合には、税務署へ届出を行います。
事業用の建物更生共済が満期を迎えた場合には、満期共済金相当額から積立掛金を控除した金額がその事業年度の所得(一時所得)または損失(積立掛金の一部の経費算入)になりますので、満期共済金を受け取ったら申告漏れのないように注意しましょう。
会社経営者にとって重要な法人税調査の種類と対処法
法人税調査では、パソコン内のデータが入念に調べられることがあり、概況聴取で聴取した売上や仕入・外注費に繋がるメモや各種書類等と突き合わせて、問題点や計上漏れの取引はないかが調べられます。
パソコン調査では、取引先と行ったメールのやり取りの確認が頻繁に行われているのが現状なので、フォルダ内も整理しておくことが肝要です。
法人税調査では、簿外の銀行預金通帳、簿外の帳簿、納品書・請求書の有無を把握するために、事務机の中や金庫の中を確認する「現物確認調査」を行うことがあります。
また帳簿調査において疑問点や不明点がある場合、調査官はその解明のため「反面調査」や「銀行調査」を行うことになります。
会社経営者にとって重要な法人税調査の具体例と対処法
法人税調査では、帳簿や請求書等以外に、事務室にある贈答のカレンダーや、メモ類などから事実を把握したり、名刺ホルダーの会社と実際の取引先を突き合わせることもありますので、自ら取引先に漏れがないか確認しましょう。
会社が赤字なのに役員報酬が高額であったり、非常勤役員への高額な報酬は、職務内容や勤務実態などに疑問を持たれることがあり、また代表者の役員報酬が少ない時は、売上除外や個人的な支出の会社への付け込みなどの不正が疑われますので、報酬が適切である説明が必要です。
代表者やその親族からの借入金が増加した場合にも、その資金の出所が調査の対象になりますので、納得できる説明を用意しましょう。
会社経営者にとって重要な法人税調査の対処法となる概況書
法人税調査では、売上は急増したが、利益率は大きく低下して利益が少ない場合は「架空仕入」「在庫の過少計上」などが疑われ、調査の対象になりやすいと考えられます。
例えば、今まで材料支給だった取引が、材料を自社で仕入れるようになった場合で、売上や利益率が前期と比べて大きく変動した時は、その理由をしっかりと「法人事業概況説明書」または「会社事業概況書」に記載して、事業内容や従業員数などさまざまな項目とともに説明しておくとよいでしょう。
税務調査対策のための適切な書類と記録の整備方法
税務調査についての事前通知を受けたら、調査に対応できるよう、以下のような書類を準備しておきすぐ出せるようにしましょう。
納品書・領収書(控え)・請求書・契約書・総勘定元帳・稟議書・議事録・補助元帳・現金預金出納帳・賃金台帳・年末調整書類・棚卸明細表・預金通帳・見積書・納品書・販売契約書・賃貸借契約書・経理規定・会社のパンフレット・組織図・タイムカード・勤怠管理表
保管期限は、法定帳簿・書類は、その年の確定申告の提出期限から7年間、それ以外の書類は5年間ですが、整理するときは時系列に並べ、わかりやすくしましょう。
税務調査対策のための適切な書類・データの管理方法
領収書の管理方法には、大きく分けて「紙で管理する方法」と「電子データで管理する方法」の2つがありますが、昨今は改正電子帳簿保存法の影響により、電子データで管理する方法が急速に進んでいます。
税務調査対策のための適切な書類を紙で管理する方法
領収書を紙で管理する代表的な方法は、「ノートやスクラップブックに添付して保管する方法」で、領収書は月ごとに取引日順にファイリングしているのが一般的です。
紙で保存する場合、会計ソフトに入力している仕訳など会計帳簿から領収書が見つけられること、逆に領収書から該当している仕訳が確認しやすいように管理することが重要で、分かりやすく管理することにより、領収書の紛失を防ぐこともできます。
税務調査対策のための適切な書類をデータで管理する方法
税務調査対策のため紙で受け取った領収書をスキャンし、電子データにして保管することは可能になりましたが、紙で受け取った領収書を破棄するためには、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たす必要があります。
2022年1月1日以降に行われたスキャナ保存については一定の要件を満たせばタイムスタンプの付与が不要となり、スキャナ保存を導入しやすくなりました。
また、電子帳簿保存法の改正により、インターネット取引で、2024年1月1日以降に電子メールなどで受領した領収書はそのまま電子保管することが義務付けられましたが、電子データで受け取った領収書を紙へ出力して保存する方法は認められていません。
税務調査対策のための適切な書類をデータで管理するメリット
領収書を電子化して管理するメリットとしては、経理業務の効率化が図れるという点で、探しやすく、必要な時にすぐに確認できるという利点があります。
また電子データなら字が消える心配がなく、保管スペースも不要になります。
個人と法人の両方に関わる税務調査の事例と学び
近年、個人でも法人でも海外取引を多く行っている事業者は、源泉所得税や消費税の取扱いについて税務調査とその結果の追徴課税が増えています。
インターネット取引など国際流通ルートが拡大し、海外取引を行う企業や個人が増え、eコマース市場が急速に拡大していることが理由です。
輸出入取引や海外投資を行う場合、本来は課税取引であるものを免税取引で集計したり、課税資産の譲渡そのものを見落とし、納めるべき消費税が過少に計算されていたりするケースが少なからず見られます。
資産の譲渡は、商品や製品の販売だけでなく事業用設備の売却、特許権や商標権の譲渡、負担付贈与なども含まれるため、事前確認の必要があります。
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成功への道:税務調査の種類に適切に対応するためのベストプラクティス
税務調査の種類に適切に対応するためのベストプラクティスとしては、税に対しての知識を深め、税務調査の種類をよく理解することが大切です。
一番多く行われる「任意調査」に対しても、調査の内容と目的を正しく理解していれば、おどおどした態度にならずにすみます。
また常に帳簿書類や記録をもれなく整理しておけば、どのような種類の調査が入っても慌てることなく対応することができるでしょう。
税務調査の種類を知ることで、税務署がどのようなことを重要視しているのかがわかり、その結果、税の知識が深まれば申告漏れなどの事態を防ぎ、税務調査に入られる確率も低くなり、事業が安定する成功への道となるでしょう。