自社商品(住宅およびその他の商品)を従業員に割引価格で販売する際の税務
2023-06-072023-06-07
現物給与課税とは
所得税の計算において、よく問題となる制度の一つが現物給与課税です。これは、従業員に対して非常に低額な家賃で社宅を提供したり、無料で昼食を提供したりするなど、金銭以外の利益(経済的利益)を与えた場合に、それを給与と同等と見なして課税する制度です。
所得税の観点からは、実質的な給与はすべて課税すべきですが、それでは手続きが複雑になり、またすべてを課税対象にすることは多くの批判を招く可能性もあるため、国税庁の通達では特定のものについてのみ、一定金額以上の経済的利益の提供があった場合に課税することとされています。
自社製品の割引販売
現物給与課税の中でも、自社製品などの割引販売に関する特定要件が存在します。以下の条件すべてを満たす場合には、割引販売は課税対象外とされています。
(1)割引販売価格が、使用者が取得した価格以上であり、かつ他社に通常販売される価格に比べて著しく低い価格ではないこと(他社通常販売価格のおおむね70%未満ではないこと)。
(2)割引率が、役員や従業員全員に対して一律に適用されるか、またはこれらの個人の地位や勤続年数などに応じて合理的な差異があり、全体的にバランスが取れていること。
(3)割引販売される商品の数量が、一般消費者が通常の家庭用途で消費する範囲とされていること。
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割引販売の例外
ただし、上記の条件(1)~(3)を満たしていたとしても、住宅の割引販売には例外があります。住宅の通常販売価格との差額については、現物給与課税の対象とされています。この理由として、住宅の割引販売価格が大幅に低い場合の金額が大きいこと、および一般の商品とは異なり、一般消費者が通常消費するような商品ではないことが挙げられます。前者の理由は別として、後者については、一定の割引販売が現物給与課税の対象外とされている意図の一つが、従業員だけでなく一般消費者に対しても割引販売を行うことがあるからと説明されています。
したがって、住宅販売業者が自社の従業員に対して住宅を提供する場合は、現物給与課税のリスクが高いため、注意が必要です。
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