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有効な節税策である倒産防止共済の否認事例

2023-03-162023-06-30

個人事業主の倒産防止共済のミス

以前、税務署を監督する会計検査院の調査によって、個人事業主の倒産防止共済について以下のミスが多いと発表されました。


1. 返戻金の収益計上がなされていないというミス
2.必要な明細書の添付がなされていないというミス


ちなみに倒産防止共済とは、取引先事業者の倒産に伴う連鎖倒産などの経営上のリスクをヘッジする目的で、その加入者に対して、無担保・無保証人で掛金の最高10倍まで借入れすることができる、という共済制度です。

この倒産防止共済には税務上の特典が認められています。具体的には、この掛金が支払時点において前納分も含めて経費にすることができる(年間240万円、最高800万円まで)点です。そのため、中小企業や個人事業主の代表的な節税となっています。

1. 返戻金の収益計上がなされていないというミス

倒産防止共済は掛金を経費として認める一方で、それを解約した場合の返戻金は、全額を収益に計上する必要があるとされています。なぜ「返戻金の収益計上がなされていないというミス」が起こるかというと、恐らくですが、倒産防止共済の掛金を支払ったタイミングと、実際に解約等して返戻金が入金されるまでのラグがあるため、収益計上する処理を失念した、ということだと推測されます。

つまり、倒産防止共済は節税になる一方で、その返戻金に対して、返戻時に退職金を支給する、といった出口戦略も必要になるということを意味しています

2.必要な明細書の添付がなされていないというミス

倒産防止共済の掛金は経費として認められるためには「所定の明細書を申告書に添付しなければならない」という要件があり、このミスは単純にその明細書の添付がない申告書が多かった、ということだと推測されます。しかしながら、困ったことに、「所定の明細書」と指定しているにも関わらず、当時は所得税の申告書で添付すべき様式を国税庁は用意しておらず、自ら所定の事項を書いた書類を作って提出するように指導しており、その結果として、個人事業主の申告で添付を忘れることが多かったよう思われます

現在は様式もあるため、失念する可能性は低いでしょうが、倒産防止共済の掛金は手続きに厳しいので、書類の添付をし忘れることががないよう、注意しましょう。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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