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認知症の方の相続対策として有効な家族信託と小規模宅地の特例の関係

2023-01-302023-06-30

認知症対策として注目されている家族信託

被相続人が認知症になった場合の相続対策として、家族信託が流行しています。家族信託とは、信託の一種で、家族間で信託契約を結び、成立させることが可能です。

ちなみに信託とは、財産を信託する委託者が、その管理を依頼する受託者に、その財産から利益を得るとされている受益者の利益になるように、資産を運用してもらう契約を意味します。

この家族信託を上手に活用すると、自身の意思に沿って財産を運用し、家族に残すことが可能になるため、認知症などの万が一の場合に備えた相続の対策として注目されています。

家族信託と税務

家族信託が相続対策に有効であると言っても、その税務関係には注意が必要です。家族信託の税務は非常に単純で、信託財産から利益を得る受益者が、その信託財産を所有しているという関係になります。

このため、財産を持っている委託者が受益者のために財産を信託した場合には、財産の所有者が受益者となりますので、そのタイミングで委託者から受託者に信託財産の贈与があったとして贈与税が課税されることになります。

同様に、家族信託の受益者が死亡した場合には、その受益者の相続人は、受益者が持っている信託財産を相続したとして取り扱われることが原則です。

小規模宅地の特例との関係は?

小規模宅地の特例と呼ばれる制度があります。これは、例えば被相続人が居住していた土地などを相続する際、一定の要件を満たすと多額の土地の評価減が認められるという制度です。この小規模宅地の特例について、信託した要件を満たす土地についても、その対象になるのかという疑義があります。

例えば、委託者である被相続人が、遺言で要件を満たす土地を信託したとします。このケースで、その受益者が、これまた小規模宅地の要件を満たす相続人であった場合、先程の原則的な信託税制の考え方からすれば、その相続人は被相続人から信託財産である土地を遺贈されたとみなされます。ただし、あくまでも税務上受益者が土地を持っているとみなされるというだけで、実際の土地は財産を管理する受託者が持っていますので、このような場合も小規模宅地の特例の対象になるのか疑義があります。

結論から言うと、相続税の取扱いとしては、上記のような場合でも「小規模宅地の特例は認められる」とされています。このため実務で適用漏れがないよう注意が必要でしょう。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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