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海外親会社から日本子会社へ貸し付けた場合の課税関係

2022-11-102023-06-30

日本に進出してきた外資系企業のあるある

外資系企業が日本に進出して間もない場合、立ち上げということもあり、資金が足らず、海外の親会社が日本の子会社に資金を貸す、ということがよくありますが、資金を貸すということは、利息が生じます。移転価格税制があるため、海外の親会社など、海外の関連者との取引については適正な金額で取引しなければならず、この利息についても、例に漏れません。

貸付金の利息と源泉徴収

ここで一つの問題点が生じます。それは、源泉徴収です。具体的には海外の親会社が所在している国がどこかという問題はあるのの、外国法人に支払う貸付金に対する利子は、日本で源泉徴収が原則必要になるからです。このため、支払先の外国法人が所在している国の取扱い、これは原則として日本との租税条約で決まっていますが、それを調べた上で源泉徴収が必要であればきちんと所得税を徴収し、日本の税務署に納付する必要があります。

日本への進出間もないケース

ただし、上記で触れた日本進出間もない外資系企業の日本の子会社は、立ち上げということもあり、利息の支払いにも苦労することがあります。このようなケースでは、利息計上しつつも、未払いとして処理し、後日資金繰りが改善してから精算することが一般的です。そしてこのようなケースでは、未払いであれば源泉徴収は必要になりません。

なぜ源泉徴収が必要ないかというと、源泉徴収は対象となる所得が支払われた時に行うこととされているからです。未払いで、事実としてお金が動いていない以上、天引きもできないので、源泉徴収も必要にならないという理屈です。

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注意すべきは元本組入れ

未払いで源泉徴収していない会社も多くありますが、注意が必要なのが元本組入れです。これは、未払いの利息分について、それを貸付金の元本に加算し、その利息分も元本として合わせて利息をとるという内容ですが、この場合では源泉徴収の対象になるとされています。

源泉徴収は支払いの際に行われると先程述べましたが、その支払いには元本組入れのように、元々の債務が消滅するような行為も含まれるとされています。元本組入れによって、未払いの利息が消滅し、別の借金、つまり債務になるということから、このケースでも源泉徴収の対象になるとされるのです。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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