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国内外の上場株式の損益通算において注意が必要な配当所得の取り扱い

2022-06-232023-06-30

上場株式の譲渡所得の計算

個人の申告で問題になることの一つに、上場株式の譲渡所得があります。証券会社のホームページを見ると、シンプルでわかりやすい解説がありますので、複雑ではない気がしますが、金融税制は細かい改正が多く行われており、正確に適用するとなるとなかなか難しいです。

とりわけ、複雑なのは株式の譲渡損がある場合です。法人税の場合、費用や損失は無条件で法人の収益と相殺できますが、所得税の場合には、相殺できるものと相殺できないものがあり、かつ相殺できるものもその中で相殺できる所得が決まっているなど非常に複雑です。

上場株式の譲渡損の原則

上場株式の譲渡損が出た場合、給与所得などと相殺できず、相殺できるのは他の上場株式の譲渡益、特定公社債等の利子所得や譲渡所得、分離課税を選択した上場株式の配当と相殺できるとされています。このため、非上場株式の譲渡益と相殺することはできません。

なお、相殺できずに残った譲渡損については、翌年以後3年間にわたり繰り越して、その期間の上場株式の配当や上場株式の譲渡益と相殺することができます。ただし、この場合はまず譲渡益から控除し、その後配当と相殺することとされています。

外国上場株式が絡むとさらに複雑

おおまかな取扱いとしては上記の通りですが、これに外国の証券取引所に上場され、外国の証券会社で管理されている外国上場株式が絡むとさらに複雑になります。外国上場株式についても、上場株式である以上、基本的には上記と同じ取扱いになりますので、外国上場株式の譲渡損と、日本の国内上場株式の譲渡益を相殺することは可能です。

しかしながら、外国上場株式の譲渡損については、国内海外問わず、上場株式の配当所得と相殺することはできないとされています。一方で、外国上場株式の配当所得については、国内上場株式の譲渡損と相殺することができるとされています。

羅列すると非常に複雑ですが、ポイントとしては、上場株式の配当所得との損益通算については、外国上場株式の譲渡損を使うことはできない、といった仕組みで作られていると考えられます。

このような仕組みにした理由はよくわかりませんが、従来、株式の譲渡損は株式の譲渡益とだけ相殺できるようにされており、それを金融業界の要望で配当にまで広げたため、相殺できる株の譲渡損の範囲を制限するべきとされたのかもしれません。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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