あなたに寄り添う税理士 税務調査対策ドットコム 24時間受付中 税務調査対策の依頼はこちらから

家事消費は個人事業主がお店を営む上で忘れてはならない税務

2022-06-022023-06-30

家事消費とは

個人事業主の税務において、注意が必要になる項目の一つに家事消費があります。家事消費とは、商品や材料などの棚卸資産などの事業用資産を、自分で消費したりプライベートで使用したりする行為を言います。例えば、飲食店を経営しているとして、食材を業者から仕入れた場合、その仕入れた食材を自分で食べるような場合がこれに当たります。一方で、カウンセラーが知人の相談に無料で乗るなど、サービスを提供する場合は家事消費には当たらないとされます。

事業主の方にとってみれば、事業用であろうと生活用であろうと自分がお金を出したことには変わりありませんのであまり意識しませんが、所得税においては、家事消費があった場合、その消費に対応する売上を計上しなければならない、とされます。例えば、八百屋を経営している場合、仕入値が70のものを売値100で売っていたとして、仕入れた野菜を家事消費すれば、お客様からお金は1円も入ってきていないのに、売値である100を売上に計上しなければならないとされているのです。

家事消費が課税される理由

家事消費についてこのような取扱いになっているのは、同じ個人でも事業と生活で財布を分けるべきであり、事業の資産を家事消費して生活のために消費すれば、それは自分(事業)が自分(生活)にものを売ったことと同じ、としているからです。すなわち、自分への売上を計上しなければならないというのが家事消費の考え方なのです。

なお、家事消費した場合には売上金額が計上されますが、その反面消費した材料などの原価については、所得税の経費として認められます。このため、先の八百屋の例でいえば、売値は100計上されるものの、原価として70を控除することができます。

棚卸資産の家事消費の売上金額の特例

家事消費に対して課税されるとすれば、売上代金がないのに所得税はかかる訳で、納税が困難になる可能性があります。加えて、家事消費があったとしても、売値がいくらになるか調べるのは複雑です。

この点を踏まえ、家事消費したものが商品や材料の棚卸資産である場合には、仕入値と通常の販売価額の70%の、いずれか高い金額で計上していれば問題ないとされています。

ただし、この特例は農業の場合には使えません。農家が自分が作った作物を家事消費視した場合には、その販売価額で所得税の申告を行う必要がありますので注意してください。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

  • Twitterアイコン
  • facebookアイコン

東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

この記事をSNSでシェア!

記載については、執筆者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、当サービス及び執筆者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。