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特別清算によって認められる貸倒損失の注意点

2022-05-252023-06-30

貸倒損失と税

税務上、問題になる経費の一つに貸倒損失があります。貸倒損失は、(1)法律上の貸倒れ、(2)事実上の貸倒れ、(3)形式上の貸倒れ、のいずれかに該当する場合に認められます。とは言え、(2)の要件は非常に困難であり、実務上は(1)か(3)で落とすことがほとんどです。

ただし、(3)は売掛債権のようなものに対してしか認められませんので、貸付金のような債権については、(1)で落とすことがほとんどです。(1)は法律上、債権が切り捨てられた場合に貸倒損失を認めるというものであり、民法や会社法などの考え方で、債権が強制的になくなった場合がこれに当たります。

特別清算という仕組み

法律上の貸倒れが認められることの一つに、債務者が特別清算した場合が挙げられます。これは、債務超過で返済が難しい会社を裁判所の関与のもと、裁判手続きで成案する手続きであり、破産に似た制度です。ただし、破産よりも手続きがスピーディー、といった特徴があり、実務ではどちらかと言えば、特別清算が使われることが多いようです。

協定型と和解型

特別清算においては会社が清算して債権もなくなりますので、法律上の貸倒れが認められる訳ですが、注意したいのは貸倒損失が認められるのは、原則として協定型の特別清算ということです。特別清算には実は協定型と和解型という二つの類型があります。前者は多数の債権者がいるような場合、協定により同意を得て会社を清算させるものであり、後者は少数の債権者の場合で、原則としてそれぞれ個別の和解で債務免除額を決めて清算させる手続きを言います。法律上の貸倒れにおいては、「特別清算に係る協定の認可の決定」で切り捨てられる場合が対象になるとされていますので、和解型ではこの対象にならないとされる可能性が大きいと言われます。

和解型の場合には債務免除の要件を満たす必要性

実務上、特別清算する場合は和解型が多いようですが、そうなると無条件では貸倒損失が認められないことになります。ただし、このケースでも法律上の貸倒れの要件を満たすことが出来る場合があります。それは、(1)債務超過の状態が相当期間継続しており、弁済見込みがないと認められ、かつ(2)その債務者に対し書面で債務免除する場合です。この場合には、その債務免除額を貸倒損失とすることができます。

ただし、この(1)の弁済見込みについて、税務署は厳しくチェックをしますし、(2)の書面の通知は絶対的な要件ですから、それを失念しては行けません。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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