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発明に対する報奨金と特許を承継する際の課税関係

2022-05-192023-06-30

発明などの報奨金も課税対象

優れた発明をした従業員などに、企業が特別な報奨金を支給することがありますが、この報奨金についても所得税の課税対象になります。この場合の課税関係ですが、その報奨金の性質によって異なることとされます。

所得税は所得の種類によって異なる課税がなされることとされますので、その原因に応じた課税関係を整理しておく必要があります。

特許などを承継する場合

以前、問題になったこともありますが、従業員が取得した特許や実用新案権などの権利を、企業が承継する場合があり、それに伴って報奨金を支給することがあります。この場合、その報奨金の課税関係は以下の通りとされます。

1 権利の承継に際し一時に支給されるものは、特許権などの譲渡の対価と見られるため、譲渡所得

2 承継後、支給されるものは雑所得

使用者原始帰属制度の場合

特許権などを承継する際にその対価の金額でトラブルになることもあり、近年は使用者原始帰属制度によって、予め企業が特許などを取得することとされている場合があります。この使用者原始帰属制度とは、契約などによって、あらかじめ企業に職務発明に係る特許を取得させる制度です。なお、この制度の場合、発明した従業員は企業から相当の利益を得ることができるとされています。

この場合は、企業が原始取得するため特許権を従業員が譲渡した訳ではありませんので、譲渡所得には該当せず、雑所得に該当するとされています。

特許権などを従業員が設定した場合

一方で、特許権などを従業員が設定し、その使用料を支払うようなケースは、雑所得で課税されることになります。なお、これらの使用料は原則として10.21%の源泉徴収の対象になりますので、天引き後の金額を支給することになります。

特許などに至らない発明などの報奨金

特許などを取るまでにも至らない発明、例えば事務作業の合理化や工夫に対する報奨金については、それが通常の勤務の範囲内とされるかで、以下の通りの課税関係となります。

1 工夫等が通常の業務の範囲内である場合は、通常の勤務の延長上であるため、給与所得

2 通常の勤務の範囲外で、一時に支給されるものは偶発性が高いものであるため、一時所得

3 通常の勤務の範囲外で、その工夫等の実施後の成績などで、継続的に支給されるものは雑所得

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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