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企業の奨学金返還支援・代理返還制度の税制上のメリットと注意点

2022-05-172022-05-17

奨学金の返済支援

学生を支援するための奨学金ですが、近年は学生の卒業後の返済負担が問題になっています。この返済を支援するための制度として、代理返還という制度が設けられています。これは、従業員が返済するべき奨学金について、企業が返済額の一部又は全額を支援するという制度で、従来は企業からもらう給与を基に返済していましたが、企業が直接奨学金の機構(日本学生支援機構。以下、単に「機構」といいます)に返済することを認める、という制度です。

代理返還のメリット

企業にとってみれば、優秀な人材を確保するために、奨学金の返済を支援する、という制度を設けることがあります。ただし、従来のようにいったん給与を支給するとなると、所得税や社会保険料の負担が発生する可能性が大きいのです。

奨学金の返済に充てるために、企業が従業員にお金を払った場合、原則として所得税の非課税規定の適用がある、という国税庁の見解があります。この理由は、「学資に充てるため給付される金品は、給与のような性格を有する一定のものを除き、非課税」とされているからです。

ここで問題になるのは、「学資に充てる」、「給与のような性格を有する」という二つの点です。企業が従業員の奨学金の返済を支援するために、給与に上乗せでお金を払うとすれば、これらの点がネックになって所得税の非課税の適用を受けることができないと判断される可能性が大きいのです。

こういう訳で、直接機構に企業が返済金を支払うという制度が設けられたのです。こうすれば、上記の問題は生じないことになります。

企業の返済金は会社の経費

ここで、企業の返済金が支払う奨学金の返済金ですが、給与として会社の経費になるとされていますので、節税という点からもメリットがあります。

ただし、給与としてという要件があることから、役員と特殊関係にある、特殊関係使用人に対する過大な支援と判断されれば、その部分は会社の経費と認められないとされます。

代理返還の手続き

企業にとっても従業員にとってもメリットのある代理返還ですが、企業の返還支援(代理返還)システムであるスカラKIを利用して行うこととされますので、機構にその申請をするなどの手続きが必要になります。詳細は機構のホームページなどをご参照ください。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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