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譲渡所得の計算における弁護士費用の考え方

2022-05-032022-05-16

譲渡所得の計算方法

土地や建物を個人が売った場合に課税される譲渡所得ですが、その計算方法は譲渡収入から資産の取得費とその譲渡に要した費用(譲渡費用)を差し引いて計算することになります。実務上、譲渡所得の計算で問題になるのは、譲渡費用の範囲です。一般的な感覚からいえば、譲渡のために生じた費用は広く譲渡費用になると考えがちですが、税法上はその範囲は大きく制限されています。

具体的には、譲渡費用は実際に行われた譲渡を前提に、譲渡に直接要した費用がこれに該当するとされます。このため不動産売買の仲介手数料などは問題ありませんが、譲渡に伴って発生する引越し費用などはこれに当たらないとされています。

弁護士費用の取扱い

とりわけ、実務で問題になる弁護士費用を例に解説します。国税庁ホームページに載っている事例ですが、土地を賃借している事例で、借地人とトラブルになった際、弁護士を入れて和解条項としてその土地を借地人に売却することになったとします。この場合、地主は土地の譲渡所得の対象になりますが、そこで発生した弁護士費用は譲渡費用にならないとされています。

譲渡に関連して発生したものであることは間違いありませんが、賃貸借のトラブルを解決するための費用としての性格が主目的であるため譲渡に「直接要した」費用ではない、という理屈なのです。

譲渡費用となる弁護士費用の例

譲渡費用となる弁護士費用の取扱いですが、以下のようなものはこれに該当するといわれます。

・ 譲渡契約を作成するために発生した弁護士費用

・ 譲渡契約の効力に関するトラブルがあり、その契約が成立した場合に支払った弁護士費用

譲渡費用として認められていない弁護士費用の例

一方で、以下のような弁護士費用は対象にならないとされます。

・ 相続で取得した資産を譲渡する場合、その相続に関する遺産分割で他の相続人とトラブルになったためその紛争解決のために必要になった弁護士費用

・ 譲渡代金の支払いを買手がしなかったため、代金回収のために弁護士に依頼した場合の弁護士費用

取得費として控除できる場合もある

このように申し上げると、弁護士費用を控除できるケースは多くないことが分かると思いますが、そうでない場合には資産の取得費として控除できる場合もあります。具体的には、資産を取得する場合に立退料が発生し、その交渉を弁護士に任せたようなケースです。この場合には、弁護士費用を資産の取得費と見る余地があります。

なお、実際の判断はケースバイケースになりますので、実際の申告の際は税理士などの専門家に相談しながら慎重に対応する必要があります。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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