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「非常勤役員の役員報酬は10万円にしておけば安全」は短絡的

2022-04-072022-04-07

非常勤役員に対する報酬の問題点

税務上、非常勤役員に対して報酬を出せるかが問題になります。非常勤役員も役員である以上、当然に役員報酬は出せることになっていますが、問題になるのは業務実態があるかどうかです。複数の会社の役員を兼務するような優秀な経営者であれば、非常勤役員であってもそれぞれの会社に貢献することになるはずで問題になることは多くありませんが、例えばオーナーが自由にできる会社の役員として、自分の親族を役員にし、ろくに仕事をしてもらっていないのに報酬を出している、といった場合は問題になります。

仕事をしていない役員に対する役員報酬の適正額は0円

法人を使ってその利益を自分の親族を役員にして役員報酬として分配する、といった手法は王道的な節税です。このため、上記の通り基本仕事をしない者を役員にすることで、法人税の節税を図ることも多くありますが、当然ながら税務署は甘くありません。このような場合、業務実態がなければその役員に対する報酬は認めないという指導をします。

ところで、税務上役員報酬については、その役員に対する報酬として過大でなければ、原則として経費になるとされています。ここでいう過大かどうかは適正額で判断されますが、何をもって適正額なのか明確な根拠はありません。このため、税務署も役員報酬について経費にならないとするのは実は非常に難しいです。

しかしながら、仕事を全くしていない役員であれば話は別です。こういう役員であればその適正額は0と算定されますので、計算は非常に簡単です。

このため、非常勤役員に対してはきちんと会社に貢献する仕事をしたといえるのか、そのエビデンスが重要になります。このため、日記などでも構いませんから、どのような仕事をしたのかなど、できるだけ細かく記録を残しておきましょう。

10万なら安全圏というのは短絡的

多少脱線しますが、以前、10万円程度なら親族を非常勤役員にして役員報酬を出しても問題ない、といった解説をしている動画を見ました。この動画ではそれを裏付ける判例もある、ということでしたが、どういう訳かその判例が提示されず、よくわかりません。

元税務職員として一つ言えるのは、判例があろうがなかろうが、国税としては勤務実態がなければ役員報酬の適正額は0と判断する、ということです。この点を踏まえ、しっかりとリスクを管理する必要があります。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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