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大口株主の改正は意味なし

2022-04-052022-04-05

令和4年度改正の目玉の一つ

令和4年度改正の目玉の一つですが、所得税において大口株主の改正が実現しています。大口株主とは、持株割合が3%以上の上場企業の株主を言います。このような株主は、これら以外の株主(少数株主)と異なり、課税上不利な取扱いになっています。

具体的には、少数株主が受ける配当は、20.42%の源泉徴収が課された上、確定申告のタイミングでは申告分離課税ないし申告不要制度を選択できることとなっています。申告不要にせよ申告分離課税にせよ、その税率は20.42%で済みます。

一方で、大口株主の場合、源泉徴収される税率は変わりませんが、その一方で確定申告のタイミングでは総合課税で計算されることになっています。総合課税とは、すべての所得を合算して申告する方法を言います。この方法になった場合、仮に給与所得など他の所得が大きい場合、配当についても高い税率で課税されることになります。なぜなら、日本の所得税は累進課税が適用されるからです。

大口株主は上場企業のオーナーであることが多く、となれば相当高額の給与をもらっていることが多いですから、結果として大口株主に該当すると配当についても高い税金を支払う必要があります。

課税逃れを防ぐ目的

しかし、その実この大口株主には大きな抜け道がありました。それは原則として自分が保有する株式数で3%の判断をするため、自分が経営する会社などに一部株を持たせた上で、個人である自己がもつ株式割合を3%を下回るようにすれば、大口株主にならないという点です。

今回の改正ではこの抜け道が封鎖され、自己がオーナーである会社(同族会社)を通じて保有する株式数についても、3%の判断に含めることになりました。この改正は、令和5年10月1日以後に支払われる上場株式の配当について適用されます。

今回も欠陥がある

しかしながら、この改正は改正がスタートする前の現時点においても欠陥があることが指摘されています。それは、同族「会社」を使って保有する場合が問題になるため、会社ではない「一般社団法人」などを使って保有すれば、今までと同じような節税が可能になるということです。

一般社団法人は登記だけで設立ができる簡単な法人で、自分の都合のよく運営できる組織ですから、何故その組織を対象にしなかったのか理解に苦しみます。となると、また近いうちに一般社団法人などを使った欠陥を防止する税制改正があり得るようにも考えられ、注意が必要です。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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