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試験研究費の改正

2022-03-252022-03-25

試験研究費とは

法人税において問題になる費用の一つに、試験研究費があります。試験研究費とは文字通り、新製品などの開発などのための研究に使われる費用をいいます。試験研究費が問題になるのは、法人税の大きな節税になる研究開発税制の対象になる費用だからです。研究開発税制は支出した試験研究費の一部を法人税から控除できるという制度で、企業の研究開発を奨励するために設けられています。

試験研究費に関し、よく問題になるのが、クラウドでユーザーに有償で提供するような、自社で利用するソフトウエアの開発費用です。

会計との違い

自社で利用するソフトウエアの開発費用について問題になることの一つに、会計の考え方と税務の考え方の違いがあります。会計は極力利益を少なくするような処理を求めるため、試験研究費の範囲を広くとらえます。具体的には、将来の利益アップが確実と認められるものを除き、試験研究に関する支出の全額を費用とし、残りをソフトウエアという資産にすることが求められます。

一方で、法人税は税収を確保するために、税収が大きくなるよう、極力利益を大きくするような処理が求められます。このため、試験研究費として税務上費用となるのは、将来の利益アップにつながらないことが確実と認められるものだけとされています。それ以外の費用は、ソフトウエアという資産にすることが求められます。

ソフトウエアになる費用は対象外

文字で書くと分かりにくいかもしれませんが、ここで問題になるのは「将来の利益アップが確実かどうか不明な費用」です。不明であるため、会計では試験研究費になりますが、税務では費用ではなく、ソフトウエアになります。研究開発税制は、あくまでも税務上の試験研究費を対象にしますので、ソフトウエアという資産とされる開発費用は、この税制の対象にならないとされていました。

令和3年度改正の措置

しかし、近年のソフトウエアのサービスは、ソフトウエアを開発した製造会社のソフトウエアについて、サブスクリプションで提供されることが通例です。このソフトウエアの開発費用についても、研究開発税制の対象にしないと日本の研究開発が阻害されますので、令和3年度改正において、自社利用のソフトウエアという資産とされる開発費用についても、研究開発税制の対象になることとされました。

このあたり、取扱いが十分に伝わっていない印象がありますので、忘れずに適用することとしましょう。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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