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デリバティブの改正

2022-03-232022-03-23

令和4年度改正で明確化

令和4年度改正により、国を越えたクロスボーダーのデリバティブ取引に係る所得について、以下のことが明確化されることになりました。

非居住者又は外国法人が国内で行うデリバティブ所得は、国内源泉所得である「国内資産の運用・保有所得」に該当しない

居住者又は内国法人が国外で行うデリバティブ所得は、国外源泉所得である「国外資産の運用・保有所得」に該当しない

国内源泉所得・国外源泉所得の意味

上記において、国内源泉所得とありますが、国内源泉所得は外国法人などについても日本で課税されることを意味します。そして、国外源泉所得は、日本に本店がある内国法人が外国で税金を納めた場合に控除される外国税額控除に影響があり、この金額が大きければ大きいほど外国税額控除できる金額は大きくなります。

結果として、この改正がなされると、以下の可能性が生じます。

非居住者・外国法人は国内源泉所得が減るため日本の課税が減り、減税

居住者・内国法人は国外源泉所得が減るため外国税額控除が減り、増税

明確化の意味

ここで注目したいのは、この改正は「明確化」と説明されている点です。明確化ということは、今までもそうだったけど、よく分からなかったので分かるようにした、ということになります。このため、従来から変わらない取扱いということですから、過去に遡って効力を有することになります。

結果として、減税になる非居住者・外国法人は税金を返してもらえる手続き(更正の請求)を取ることができるとされ、増税になる居住者・内国法人は修正申告により、税金を追加で納めることが必要になる場合があります。

酷すぎる取扱い

理論的に過去に遡って課税を修正するのがこの改正なのですが、税法の大原則として、過去に遡って課税を行うことは許されないとされています。明確化とは言え、過去に遡って課税を修正することになるこの取扱いは酷すぎると結論付けられます。

実際のところ、当の国税庁も、従来とは課税の取扱いが変わることは認めています。取扱いが変わる、ということは明確化ではなく、純然たる「改正」としか思えないのですが、国税庁や財務省はどのような神経なのでしょうか。

しかしながら、国税庁ホームページにおいては、遡って課税を修正する旨が明記されており、今後大きな問題になる可能性がありますので注意してください。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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記載については、執筆者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、当サービス及び執筆者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。