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擬似DESという対応策

2022-03-082022-03-08

現物出資の課税関係

法人に対する金銭の出資に変えて、土地などの資産を出資することを現物出資と言います。現物出資の課税関係は、現物出資をした側ではその出資の見返りにもらう株式等の時価で資産を譲渡したと取り扱われます。一方で、現物出資を受けた法人においては、時価でその現物出資の対象となる資産を譲り受けたという課税関係になります。このため、現物出資を受けた法人では、その譲り受けた資産分会社の資本金が増えることになります。

債務超過会社のDESが問題になる

ここで問題になるのは、債務超過会社に対するDESです。DESとはデッドエクイティスワップの略で、債権者が債務者である法人に、その債権を現物出資する取引を言います。このDESを受けた法人について、先の課税関係を当てはめれば、債権の時価分資本金が増えることになり、その反面その債権に対応する債務が消滅することになります。

ここでいう債権の時価ですが、一般的には債権の額面が債権の時価とされていますので、通常の場合には債権の時価と債務の金額がイコールになり、特に問題は生じません。しかし、債権の返済が難しい債務超過会社であれば、その債権の回収が難しいため、回収が難しい部分を踏まえて評価するべきとされる場合があります。この場合、例えば債権の額面が100で、回収見込みが30とすれば、DESをすると資本金が30増える反面、借金が100(債権の額面と同額)減りますので、差額の70の処理が問題になります。

この差額については、一般に債務の消滅による利益とされますので、債務免除益として法人税の対象になります。すなわち、債務超過会社に対するDESは法人税が増える場合があるのです。困ったことに、この仕組みを失念していたとある税理士に対して、3億円超の税理士賠償訴訟が認められた事件もありますので、注意が必要です。

擬似DESなら基本問題なし

債務超過会社に対するDESにはこのような問題が生じる訳ですが、その反面債務超過会社を再建しようとする場合、債務が障害にならないように、DESをしたいというニーズは多くあります。この場合に、課税上の問題を解決するスキームの一つとして、擬似DESがあると言われます。

これは、DESの代わりに、債権者が銀行からお金を借りて会社に出資をし、債務超過の会社はそのお金で債権者からの債務を返済した上で、債権者はその返済資金をもって銀行にお金を返す、というスキームです。これは単に銀行から借りたお金を回しているだけで実態はDESと変わりませんが、債務を現金で返しますので、免除のような話は出てきません。

こうすれば、DESの問題は直接は生じませんので、安易な節税と見られるような場合を除き、原則問題ないと言われます。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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