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耕作権の評価の注意点

2022-02-152022-02-15

土地の上に存する権利とは

相続税の評価においては、土地や土地の上に存する権利の評価が問題になります。土地の上に存する権利とは、借地権などの土地を利用する権利を言い、土地の賃貸借などで発生することが多くあります。このような権利が設定されていれば、地主は土地を自由に使用することが難しいため、権利として一定の金額の評価減をすることができます。一方で、その権利を持っている場合には、その権利も相続財産に該当しますので注意が必要です。

田を貸した場合の取扱い

相続税の財産評価においては、同じ土地でも宅地や農地、雑種地などその種類によって評価方法が異なっています。宅地を貸せば原則として借地権として評価されますが、農地である田や畑などを他人に貸す場合、耕作権として評価されることになります。

耕作権については、貸していない自己所有の農地の50%で評価されることになっています。

ヤミ小作の場合は

ところで、農地については、単に地主と借主(小作)が合意しただけでは、耕作権は成立しないことになっています。農業については、『農地等の利用の最適化の推進』を中心に、農地法に基づく農地の売買・貸借の許可、農地転用案件への意見具申など、農地に関する事務を執行する行政委員会として、市町村が設置している農業委員会が監督しています。このため、農地の賃貸借についても、農業委員会に申請した上で、行政の許可を取るなどの煩雑な手続きが必要になります。

この点、農地法という法律に定められている訳ですが、煩雑な取扱いを嫌ったり、小作との縁故によって賃借したりと、農業委員会に届出をすることなく農地の賃貸借が行われることもあります。このような状況をヤミ小作と言います。

ヤミ小作の状況で相続が開始した場合、上記の耕作権が認められるかどうか、実務では問題になります。

ヤミ小作はゼロ評価

この点、財産評価の通達の解説では、ヤミ小作の場合には、実際の賃料のやり取りがあったとしても、耕作権の評価をしないとされています。このため、通常の自己所有の農地の金額で評価をする必要があります。

税務の考え方として、実質基準と言われる考え方があり、形式に関係なく実質に基づいて課税する、という理論はありますが、農地に関しては農業委員会の許可という形式が重視されますので、農地の賃貸借などについては、きちんと申請手続きを踏んで行うことにしましょう。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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