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株式交付制度の全体像

2022-01-312022-01-31

株式交付とは

2021年3月から施行されている改正会社法では、「株式交付」という制度が創設されています。株式交付は、会社の買収で使われる制度で、ある株式会社(買収会社)が他の株式会社(被買収会社)を子会社化するために、その対価として買収会社の株式を交付することができるとする制度です。この制度は、合同会社などでは使えず、株式会社のみが使える制度ですが、多くの可能性を秘めた制度と言われます。

株式交付のメリット

自社の株式を対価として使うことができれば、資金繰りの都合上非常に得になりますので、企業買収のために自社株を使えるように経済界から要望があり、その要望が実現したのがこの制度です。これと似た制度で、株式交換があります。株式交換は買収したい会社を子会社化するために、自社株を買収したい会社の株主に交付する制度ですが、この株式交換は子会社化といっても「完全子会社」にするための制度です。すなわち、100%支配する時に使える制度ですので、買収すると言ってもそこまで支配する必要はない、といった会社のニーズに沿うものではありませんでした。この点、一例としては買収の対象となる会社が上場企業のような場合、完全子会社にすると上場廃止基準に当たることから、そうならないように一定の株式保有割合に留める、といった場合が挙げられます。

その他、株式交付のメリットとして、検査役の調査が不要になる点も挙げられます。自社株を使って買収をする場合、買収したい会社に自社株を現物出資する、という方法も考えられますが、現物出資をする場合には検査役の調査が原則として必要になるとされています。検査役検査とは、出資した財産の価値が適切であるかを、裁判所が選任する検査役によって証明してもらうための調査と意味します。この検査役検査については、期間が長期間かかるとともに、費用も高額という問題がありますので、株式交付でこれが不要になるのは、大きなメリットと言えます。

株式交付の税務上の取扱い

この株式交付ですが、税務上の取扱いが令和3年度改正で設けられました。具体的には、被買収会社の株主が交付を受ける、買収会社の株式の価額の割合が80%以上の場合、その株主が有する被買収会社の株式のうち、交付を受ける買収会社の株式に対応する部分については、譲渡所得の課税はないとされています。株式交付は従来持っている被買収会社の株式に代えて買収会社の株式の交付を受ける制度ですので、本来は譲渡所得の対象になる訳ですが、この要件を満たしていれば課税なしとされます。(以下次回)

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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