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非居住者に対する役務提供

2022-03-102022-03-10

消費税の輸出免税

消費税においては、国際間の調整を兼ねて、輸出免税という制度があります。これは輸出取引に対しては消費税を免除するという制度であり、輸出企業が消費税の還付を受けることがよくニュースになりますが、これはこの制度があるからです。

なお、時々野党の政治家が、輸出企業を優遇してけしからんなどと言いますが、それは全くの筋違いです。というのも、輸出企業から商品を買う海外の消費者は、消費地国で消費税に相当する付加価値税を納める必要がありますので、輸出品に日本の消費税を課税すると二重課税になるからです。こうなると、輸出が阻害されるので、国際ルールとして輸出に対しては消費税を免除するという仕組みが取られているのです。

役務の提供も輸出になる場合がある

この輸出免税ですが、商品を船積みして海外に送るような典型的な輸出に止まらず、サービス(役務の提供)についてもこれに該当する場合があります。専門的には、非居住者に対する役務の提供と言われるものです。

ここでいう非居住者とは、外国法人や外国人のうち、日本に支店などもない方を意味します。こういう方に所定のサービスをすると、輸出に類似した取引として、消費税の免除の適用が受けられます。

具体的には、非居住者からの依頼により、日本で行われる広告などがこれに該当します。このようなサービスについては、そのメリットを海外にいる非居住者が受けますので、サービスの効果は日本で完結するものではなく、海を越えて効果が発生するため輸出と同視できる、という考えによります。

輸出類似取引の例外

上記の輸出免税とされる、非居住者に対する役務の提供(輸出類似取引)についてですが、以下のようなサービスについては、非居住者に対するものであっても輸出免税にならないとされています。

1 国内に所在する資産の運送や保管

2 国内における宿泊や飲食

3 1および2に準ずるもので、国内において直接便益を受けるもの

輸出類似取引はサービスの効果が日本を越えることをもって免税としている訳ですが、上記の取引は基本的に日本を越えることはありませんので、免税にはならず、通常の通り消費税を課税することとしています。

1や2は別にして、上記3は具体的にどのようなものが対象になるか、プロである私たち税理士も迷うことが多いですが、基本的には国内で完結するかどうかで判断します。疑義がある場合には、専門家と相談しながら慎重に判断することとしましょう。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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