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法人税の代表的な争点「建物の取壊費用の取扱い」

2022-12-052023-06-30

取壊の目的が問われる

法人税の実務において、「建物の取壊費用の取扱い」がよく争点になります。建物を取り壊すため、常識的に考えて、それは原則として会社の損失となるわけですが、これが損失として認められない場合があります。

具体的には、建物が建っている土地に、その土地を利用する目的で、建物ごと購入するケースです。これは、建物を利用することを目的としているのではなく、土地を買う目的で建物も購入するため、税務上では、その建物の取壊費用は、土地の取得価額に含めるべきとされています。

「土地を買うため」の判断は

取壊費用を土地の取得価額に含める場合、建物や機械などに認められる減価償却も使えません。つまり実際のその土地を売るまで経費にすることはできません。これによって節税的にも「土地を買う目的で建物を購入したか否か」という判断が問われることになります。

これについての基準ですが、国税の通達によると、土地建物を購入してから「概ね1年」以内に建物を取壊した場合に該当するとされています。ただし一つ注意が必要なのは「概ね1年」であって「1年」ではないというところです。

実質判断が必要

具体例を紹介します。もしも「土地を買う目的」で建物も買い、1年を超えて放置し、その後に建物を取り壊したとします。これは1年という時間を経過しています。しかし、それでもやはり「土地を買う目的」なので、結局建物の取壊費用は土地の取得価額に含めるべきと判断されることになります。

逆のケースとして「土地を買う目的」ではなく、土地建物を利用する目的だったとします。具体例としては、第三者への賃貸目的で購入したが、一向に借手が見つからないため、土地を有効活用するという方針に切り替え、その結果1年以内に建物を取り壊した場合には、土地の取得価額に含める必要はないと考えられます。1年経たずに建物を取り壊していますが、そもそもの目的は「土地を買う目的」ではないからです。

ただし、1年以内であるため、この点について税務署から厳しく追及されますので、「土地を買うため」ではなく、後発的な理由で建物を取り壊したことについて、きちんと説明できるようにしておく必要があるので気をつけましょう。

形式判断をする税務職員は多い

税務上は、実質判断が問われるケースがよくあるので注意が必要ですが、一方で1年という基準にとらわれる税務職員も多いですから、税務調査ではきちんと主張しましょう。

この記事を書いた人

松嶋 洋(元国税調査官・税理士)

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東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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